暁 〜小説投稿サイト〜
超速閃空コスモソード
最終話 みんなの笑顔
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った。

 ルックスも人当たりもよく、町の住民からも慕われているカケルを悪く思うパイロットは、この基地にはいない。
 ……ゼノヴィアはこれを見越し、彼女達の中から将来の「妃」を生み出し、合法的にカケルをラオフェンとして軍に引き戻そうとしているのだ。

 それを看破しているゼナイダは、そんな母の形振り構わない姿勢を脅威に感じつつ――渡されたタオルで汗を拭きながら、思いを寄せる英雄の勇姿を見上げていた。

(わ、私も、いつかは彼と……)

 あの日見た、凛々しい横顔が脳裏を過る度。全身を焦がすような熱に苛まれ、思考を乱されてしまう。
 十七年の人生経験がまるで通用しない、その感覚に翻弄されつつも――彼女はその甘美な熱に酔いしれるように、空を舞う想い人を見上げるのだった。

「……なんじゃいなんじゃい! 一人くらいワシのところに来たってええじゃないか!」
「父さんは無理よ。目つきがやらしいもん」
「なんじゃとう!?」

 一方。同じタイミングで着陸したにも拘らず、誰一人出迎えに来ないジャックロウは、柵越しに毒づく娘に噛み付いていた。
 そんな父の情けない姿にため息をつきながら、カリンは後ろを振り返り――自分の「足」となっているアイロスを一瞥する。

「……とにかく、向こうが本気になった以上、あたしも気合を入れなきゃね。軍なんかにカケルは絶対渡さないわ。アイロス! 次の店行くわよ、車出して!」
「またぁ!? もう荷物積みすぎで俺様のレンタカーがお釈迦になりそうなんだけど!?」
「知らないわよあんたの懐事情なんて。ホラ、さっさと出す! 次は勝負水着と勝負下着よ! ――言っとくけど、あんたは店の外で留守番。死んでもあんたには見せないから」
「あんまりだ! 職権乱用だ!」

 パトロールにかこつけたカリンのショッピングに付き合わされ、アイロスのレンタカーはすでに荷物の山で押し潰されそうになっている。
 だが無情にも、カリンの買い物続行宣言は青空に広く響き渡り――アイロスの悲鳴がそれに反響するのだった。

「……見てなさいカケル。絶対あたしが捕まえて、曲芸飛行士を続けさせて見せるから」
「うぅ……カケルのバッキャロ……」

 青空に航跡を描くカケルに、カリンは熱い眼差しを送り――後部座席からアイロスの頭を踏んづける。

 そんな見慣れた日常を、守り抜かれた青空から見下ろして。カケルは今日も、馴染みの笑顔を空から振りまいていた。

 ◇

 遥か昔、惑星アースグランド――当時は「地球」と呼称されていた――では、大規模な大戦があった。

 蒼く広大な星を二つに隔てた陣営の片方は、圧倒的な物量で攻め入る相手に対抗すべく、優秀なパイロットを積極的に投入した。

 本来あるべき休みもなく、戦いのみに生きる
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