最終話 みんなの笑顔
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動かして反論する。
今までの緊張感を丸ごと台無しにする、その場違いなやり取りに――ゼナイダ、カリン、アイロスの三人は揃ってずっこける。
「だっておじさん、前科しかないし。それが原因で奥さんに逃げられたんでしょ?」
「だからと言ってワシばっかり悪者にするんじゃないわい全く! そんな意地悪ばっかり言うんじゃったら、カリンは嫁にやらんぞい!」
そして、自分の緊張を台無しにされた怒りと、自分をダシにされた怒りが合わさり――ゼナイダとカリンは、憤怒の形相で立ち上がる。
修羅の化身とした彼女達のオーラに慄くアイロスを尻目に、二人はやがてジャックロウの両脇に立つと――
「だぁれがこんな不埒者のぉぉおぉおッ!」
「あたしをダシにすんじゃねぇえぇえッ!」
「ぶぎょぅあぁあぁあッ!」
――顔面と後頭部に、体重を乗せたミドルキックを炸裂させた。
腰程度の等身しかない彼の頭部に、両者の蹴りが挟み撃ちのように決まり――老兵は全身から鮮血を撒き散らして、錐揉み回転しながら飛翔する。
やがて彼だった肉塊は、激しい回転と共に山なりに飛び――カケルとゼノヴィアの間に突き刺さるのだった。
――そして。
そんな老兵の末路を、路傍の生ゴミを見るような目で見下ろすゼノヴィアを他所に。
「ジャッ……ジャックロウおじさぁあぁあぁあぁんッ!」
かつて救世主だった青年の悲痛な慟哭が、天を衝くのだった。
◇
――それから約一ヶ月。
撃墜されたゼナイダとジャックロウには新たなコスモソードが配備され、基地には多くの新任パイロットが着任していた。
「コルトーゼ先任少尉! 訓練お疲れ様です!」
「少尉殿! 冷たいお飲み物をどうぞ!」
「お前達! シャワーと換えのお召し物の準備よ!」
「はい!」
……しかも、全員女性。
飛行訓練から帰って来たゼナイダは、あの戦いの後に突然配属されてきた部下達の、手厚すぎるケアを受け――渋い表情を浮かべていた。
(それだけ母上が本気である、ということか……)
生まれも育ちも身体の発育も年齢も階級も、何もかもが全く彼女達。ただ一つ、彼女達にはゼノヴィア直属の部下という共通点があった。
言うまでもなく、皆がラオフェン・ドラッフェの籠絡を目的に派遣されてきたパイロットである。
彼女達自身は何も知らないようだが、いずれにせよこの街にいる限り――
「あ、見て見てみんなアレ! カケル君の曲芸飛行始まるみたい!」
「えっホント!? 見る見るー!」
「きゃーっ! かっこいいー!」
――嫌でもカケルの曲芸飛行を目にすることになる。
徴兵される以前から有名だったこともあり、洗練された彼のフライトは、純粋な女性達の歓心を惹きつける完成度であ
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