暁 〜小説投稿サイト〜
超速閃空コスモソード
最終話 みんなの笑顔
[2/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ス三等軍曹……! あなたは……!?」
「ワシのことは、どうでもよいでしょう。……今はただ、あやつらの選択を受け入れてくだされ。ラオフェンと、ハリオンの選択を」
「……!?」

 彼女達の振る舞いを咎めようとするゼナイダを、いつになく神妙な面持ちのジャックロウが制止する。その異様な雰囲気と、彼の口から出てきた言葉に、若き少尉はさらに目を剥いた。
 ハリオン――とは、ハリオン・ルメニオンのことか。一介の三等軍曹が総司令官を呼び捨てとは、一体どのような了見だというのか。
 矢継ぎ早に脳裏を駆け巡る疑問に混乱するゼナイダ。そんな彼女を一瞥した老兵は、どこか儚げな表情で、青空を翔ける赤い鳥を見上げた。

(――カケルよ。お前が振り撒く笑顔はやはり、戦場には似合わんのう)

 機械仕掛けの赤い鳥は、青い鳥の猛攻を鮮やかにかわし――優雅に空を走る。まるで、曲芸のように。

 ◇

 ――UI戦争が激化し、中枢惑星アースグランドから徴兵制度が施行される頃。
 その星の一国家「ジャパン・エンパイア」の都市に、竜造寺カケルという少年飛行士がいた。

 巷で有名な曲芸飛行士として知られ、戦争に苦しむ人々を励ますために飛ぶ彼の笑顔は――荒んだ時代に生きる人々に、前を向くための活力を齎してきた。
 そんな日々を続け、いつか戦争が終わる時まで、みんなと一緒に笑い合えれば。少年は、いつもそれだけを願い、操縦桿を握り続けた。

 ――軍部にその操縦技術を見出され、徴兵の対象とされるまでは。

 半ば強制的に軍に組み込まれた彼は、それでもなお理想を捨てず。戦争を終わらせるために戦えば、きっとみんなを笑顔にできると、そう信じてコスモソードに搭乗した。
 そして初陣で――彼は同期全員と所属部隊を喪った。

 ただ一人生き延び、単機でその全ての仇を討ってみせた彼は、直ちに総司令部へ召喚され――自らの名を捨てることを強いられた。
 職業軍人達を軒並み虐殺した尖兵の大群を、元曲芸飛行士の現地徴用兵に屠られた――とあっては、軍部の威信に関わるためだ。
 そして、公的に戦死扱いとなった「竜造寺カケル」に代わり――総司令官ハリオン・ルメニオンに、新たなコードネーム「ラオフェン・ドラッフェ」を授けられた少年は、半世紀に渡る宇宙戦争に終止符を打つべく、その最前線へと投入されていくこととなる。

 自由を奪われ、名前も奪われ。それでも少年は、いつかは自分の夢が叶うと信じて、飽くなき闘争に身を投じ続けた。
 しかし時代は、政府は、人々は。そんな彼に、さらなる裏切りを重ねていく。

 ――やがて戦争の終わりも近づき、「ラスト・コア」との決戦が見えた頃。勝利を確信した官僚や軍部の権力争いが激化し、ラオフェンまでもがそれに巻き込まれる可能性が濃厚となった。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ