第3話 エースパイロットの目醒め
[1/10]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「はぁあ……」
地下深くの地下牢に幽閉された、一人の男。置かれている状況に対して、余りにも緊張感に欠けるため息を漏らす彼は――牢の隅で膝を抱え、明日の朝日を夢見ていた。
その両手は、超合金製の手錠で封じられている。
◇
――あの後、結局ゼナイダに捕らえられたカケルは敢え無く連行され、カリンの保安事務所の地下牢に封じられてしまった。
その様子を事務室からモニターで監視するゼナイダを、カリンがじろりと睨む。
「……あんたねぇ。ちょっと胸触られたくらいで、大袈裟なのよ。これだけ懲らしめたら、もう十分でしょ?」
「さ、先ほどのことは忘れなさい。私の、生涯の汚点だわ。……それより、保安官のくせに犯罪者の肩を持つの? あなた」
「まぁまぁ、二人ともそうカリカリするでない。今日一日くらい牢で一晩反省させて、明日には帰してやってもよかろう」
包帯だらけのジャックロウは二人の口論を取りなそうと口を挟むが、そんな小柄の老兵にゼナイダは厳しい目線を向ける。
「ジャックロウ・マーシャス三等軍曹。あなたの発言権を認めた覚えはないわ。……それに明日に帰すつもりもない。公然猥褻罪は最低六ヶ月以内の懲役。それがルールよ」
「最低六ヶ月以内なら明日帰してもいいでしょうが! ホンット頭カチカチなんだから」
「黙りなさい乳牛」
「んぬァんですってェ!?」
ゼナイダとカリンの睨み合いはさらに加熱し、互いの乳房が双方の胸を圧迫する。それを受け、ジャックロウが鼻の下を伸ばして身を乗り出してきた。
「落ち着かんかい二人とも! 喧嘩するならワシもそこに挟んで――はばがッ!」
――直ちに両者の蹴りで黙らされたが。
カリンの踵落としとゼナイダの蹴り上げが同時に炸裂し、ジャックロウの顔面が上下からの挟み撃ちにひしゃげる。
再び血だるまと化した彼は、力無く崩れ落ち――彼女達はその惨状を意に介さず、睨み合いを続行した。
「誰に対してもそんなに甘いのかとも思ったけど――あのレーサー気取りの愚物に対しては、あなたも毅然だったわね。……竜造寺カケルだけ特別なのは、あなたの恋人だから?」
「ち、ちがっ! そりゃ、いつかはって思うことはあるけど……」
「保安官失格ね。男絡みの私情を挟んで、減刑の交渉だなんて」
失望、という感情を表情に表し、ゼナイダは目を細めてカリンを一瞥する。そんな彼女に視線を合わせず、女保安官は天井を仰いだ。
ふと、昔のことを振り返るように。
「――この町にとって、そんな軽いもんじゃないのよ。カケルの存在は」
「……?」
すると、彼女は自分のデスクに飾られた写真立てを手に取り――自分達に囲まれ、満面の笑みを浮かべたカケルの写真を見つめる。
写真の記憶を辿り、思い起こされる過
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ