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超速閃空コスモソード
第3話 エースパイロットの目醒め
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ゃない! 町を守る保安官が駐在軍に任せっきりだなんて、いい恥さらしよ!』
『だから俺様は保安官じゃねぇってのにぃぃいい!』

 その上、自分があれほど罵ったポロッケタウンの住民達が、今も援護射撃で自分のために戦っている。――本来、それは軍人である自分の役割であるはずなのに。

「……すま、ない」

 情けなくて、涙が出る。
 無念を募らせたまま、コスモソードから緊急脱出した彼女は空を仰ぎ――憎々しげに宇宙海賊を睨み付けた。

「……ちくしょう。ちくしょう! ちくしょうちくしょうちくしょうっ!」

 そして、苦し紛れに――目尻に涙を浮かべながら、彼女は腰のホルスターに手を伸ばす。パラシュートで降下しながら、コスモソード目掛けて光線銃を連発するという、エリート軍人らしからぬ行為に周囲の注目が集まった。

(何が軍人、何がエリート! 何がコスモソード! 私は結局、何も守れていない!)

 ――それは、ゼナイダ自身のあるべき姿だったのかも知れない。負けず嫌いで意地っ張りな、ゼナイダ・コルトーゼという少女の。

 戦時中、共にヘレンズシティで育ってきた友人達が次々と徴兵されて行く中。コルトーゼ将軍の息女という身分を理由に、徴兵を免れてきた彼女は、いつも戦争に巻き込まれて行く友人達を見送ることしか出来なかった。
 そんな彼女に心配させまいと、友人達は皆、笑顔で旅立ち――誰一人、帰ってくることはなかった。

 あの日の笑顔を守るには、少女はあまりにも無力だった。だからこそ彼女は、母のような軍人となり、全てを守る力を渇望するに至ったのである。
 ――UI戦争を終わらせた、伝説のラオフェン・ドラッフェと共に戦った名将と知られる、母のように……と。

 だが、その野心とは裏腹に――現実にある光景は、自分が原因で全てが崩れている。そのギャップに伴う痛みが、彼女の胸に突き刺さり――それはやがて、宇宙海賊への怒りへと変化していた。

 ◇

「ゼナイダ……」

 銃身が焼け付くまで、ひたすら引き金を引き。動かなくなれば、銃身をなげつける。エリート軍人には程遠い、感情に任せた行動に――カリンは、自分に近しいものを感じていた。

「お、おいカリンやべぇぞ! あんにゃろぉコッチに来やがった!」
「――わかってる! グチグチ言ってないでさっさとかわしなさい! それでも自称レーサーなわけ!?」
「自称って言うなぁぁあ!」

 だが、感傷に浸る暇はない。宇宙海賊の狙いは、いよいよ地上を走るコスモハンマーに迫っていた。地上に向けて容赦無く放たれるレーザーの嵐が、土埃を絶え間無く噴き上げる。
 ――その中を掻い潜り、しきりに跳ね回る車体が、砂塵の渦中から飛び出してきた。アイロスの腕がなければ、とうに横転しているような無茶な運転
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