第3話 エースパイロットの目醒め
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カケルはその相手と飲んで騒いで――最後に、空を飛んだ。カケルの曲芸飛行を見た奴はみんな、そんなカケルと戦うことがバカバカしくなって――最後はどいつもこいつも、カケルと肩組んでどんちゃん騒ぎ」
「……」
「自分を殺しに来た相手とも、友達になっちゃう。カケルは、そういう人なのよ。マフィアのボスは、どんちゃん騒ぎしたいがために足を洗って、今はあの酒場のオーナー。マフィアの用心棒だったアイロスは、飲み代欲しさにレーサーになった。……暗く淀んだポロッケタウンを、カケルは一人で塗り替えちゃったんだ」
「……そんな、バカなこと……」
「そうよね。バカもいいとこ。大バカだわ。……気がついたらあたしも、みんなも。あいつの周りに集まって、カケルのフライトを楽しみにしてる」
一通り語り終えたカリンは、体をほぐすように両手を組んで天井に伸ばす。言いたいことを言い尽くした、満足げな表情だ。
「『みんなの笑顔』。いつも、カケルはそう言って戦うし、飛ぶ。全部それだけのために、カケルは頑張ってる」
「……」
「確かにバカはバカだけど。あんたが冷たく見下してるバカとは、全然違うってあたしは思うわ」
ちらりと、こちらを真剣に見つめるゼナイダを見遣り、カリンは口元を緩めた。
「……笑顔、か」
――そうして、オウム返しのようにゼナイダが呟く時。
事務所の外から、異様な喧騒が響いていた。
◇
「……? 何か騒がしいわね」
「なんだろ、また酔っ払いの喧嘩かな。もー、しょうがないなぁ。今日だけで十二件目よ」
「……それはさすがに同情するわ」
何事かと身を乗り出すカリンが、外の様子を見ようとウェスタンドアを開く――直前。逆に入り口の方からドアが開かれ、見慣れた顔が飛び出してきた。
「おいカリン大変だ! やべーぞやべーぞ!」
「んなっ!? 何よアイロス藪から棒に!」
「今は口喧嘩してる場合じゃねぇ! 外見ろ外! まじやべー!」
ただならぬ焦燥を漂わせるアイロスの表情に、訝しげな視線を注ぐカリンは――僅か一瞬だけゼナイダと顔を見合わせ、事務所の外に出る。
そして彼が指差した、青空の彼方を見上げ――戦慄した。
空を裂き、ポロッケタウンの上空を飛翔する一機の宇宙戦闘機。その全貌に――カリンは見覚えがあった。
「う、そ……でしょ!? あの青い縁取りの翼、黒いボディ……!」
「あぁ間違いねぇ! 軍でもどうしようもねぇって噂の、最強最悪の宇宙海賊だ! なんでこんな田舎町に来たんだよ!?」
情報技術に疎いこのロッコルにも、名が知れている存在はいくつかある。そのうちの一つが、私腹を肥やす官僚ばかりを狙う義賊で有名な、宇宙海賊セドリック・ハウルドだ。
その獲物の殆どは金持ちばかりであるが、稀に個
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