第2話 砂漠の惑星ロッコル
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と、すぐさま白い顎髭を撫で、鋭い目つきに変わった。
「あ、ジャックロウおじさん! この人は新しく着任してきた軍のパイロットで――」
「んひょおぉおぉぉお〜っ! プリプリのかわいこちゃんじゃ〜っ!」
「ちょっ、おじさんっ!?」
そして、疾きこと風の如く。ジャックロウと呼ばれた小柄の男は、その体躯からは想像もつかない速度で走り出し――カケルとすれ違う瞬間、ゼナイダ目掛けて飛びかかった。
体を大の字にして、ムササビのように襲い来る変態。その女の敵を前に、冷静さを取り戻したようにゼナイダは無表情になる。
「ほげがッ!」
直後。程よい大きさで、形の整ったゼナイダの双丘に飛び掛かるジャックロウの顔面に――非情の裏拳がめり込む。
生涯、前が見えなくなりそうな一撃を浴びたジャックロウの小さな体は、螺旋状の回転と共に宙を舞う。青空の下に舞い散る鼻血の雨が、その威力を物語っていた。
凄惨を極めるその仕打ちに、カケルは涙目になりつつ声にならない悲鳴を上げる。――だが、惨劇は終わらない。
錐揉み回転の果てにジャックロウが辿り着いたのは、セクシーな衣装に身を包む年頃の娘。はち切れんばかりの爆乳にへばりついた彼は、妻譲りの美女に「成長」した愛娘の柔らかさを前に、下卑た笑みを浮かべた。
全身でカリンの肢体に抱きつく父は、顔を擦り付けるように娘の胸に埋もれて行く。
「んっほぉお〜……えぇ気持ちじゃあ! 母さんと瓜二つの、このぷるんぷるんのおっぱ――ぼぎゃえぁあぁあ!」
――路傍の生ゴミを見下ろすような眼差しで自身を射抜く、娘の眼に気づかないまま。
一瞬でひっぺがされたところに渾身のストレートを叩き込まれたのは、その直後のことだった。もう元に戻せるかもわからないほどに、顔を陥没させられたジャックロウは、矢の如し疾さで後方に吹き飛ばされてしまった。
その最高速度は現在進行形で先を走っていたゼナイダとカケルを抜き去るほどであり――彼の体はカケルの眼前で、さっきまで椅子にしていた木箱に突き刺さってしまう。
轟音と共に爆散する木箱。あまりの事態に酔いを覚まし、逃げ惑う飲み仲間。血だるまで横たわるジャックロウだけが、現場に残されていた。
「ジャッ……ジャックロウおじさぁあぁあぁあぁああんッ!」
刹那。
耐え難い悲劇に直面したカケルの、悲痛な叫びが青空を衝く。
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