第2話 砂漠の惑星ロッコル
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かべ、大仰に両手を広げた。
「オレは竜造寺カケル! このポロッケタウンに花いっぱいの笑顔を振り撒く曲芸飛行士ですっ!」
(頭の悪い男ね。見るからに)
「せっかくですし、お近づきにこれをどうぞ! オレの故郷に伝わる伝統的食べ物! 『素麺』です!」
「私はゼナイダ・コルトーゼ少尉。……そのわけのわからない食べ物は遠慮させて頂くわ。バカが移りそう」
その、頭の中に花畑が広がっているような自己紹介に、ゼナイダは冷ややかな眼差しを向ける。そんな彼女の冷淡な態度など意に介さず、その眼前に小さく箱詰めされた土産を差し出してきた。
それを蚊を払うように手振りで拒絶するゼナイダは、うなだれるカケルを無視して基地の外へと踏み出して行く。町へと繰り出す彼女を追い、カケルが慌てて走り出したのはその直後だった。
(――コルトーゼ、か)
◇
タンブルウィードが忙しく転げ回り、へレンズシティに劣らぬ多種類の宇宙人が、狭い街道を行き交っている。
舗装もされず、砂塵に地の色を染められた、低い建物ばかりの町並み。さながら西部劇のようなその光景に、ゼナイダは激しい文明の差を感じていた。
(……星間連合の管轄下に、こんな文明未発達な都市があるとは思わなかったわ。私も、まだまだ勉強不足ね)
そんな彼女に、町の施設を一つ一つ丁寧に説明しつつ。カケルはある酒場のウエスタンドアを開き、笑顔で彼女を招き入れる。
どうにも胡散臭いその振る舞いを訝しみつつ――彼女は応じるように中へ踏み込んだ。
「おうカケルじゃねぇか。なんだぁそのべっぴん。新しい彼女?」
「違うよ、新しくここに来てくれた軍のパイロットさん。前にジャックロウおじさんが話してたろ?」
「あー……そうだっけか?」
そこでは享楽的な男達が昼間から飲んで騒ぐ、よく言えば自由奔放、悪く言えば無秩序な光景が広がっていた。その中の知り合いらしき一人の青年が、酔っ払った様子でカケルに声を掛ける。
艶やかなブラウンの髪や金色の瞳など、見目麗しい容姿ではあるが――そのぐうたらな振る舞いと着崩し過ぎな緑のジャケット姿からは、容姿に見合う気品はまるで感じられなかった。
「竜造寺さん。こちらの知能指数が怪しい男は?」
「知能……。え、ええと。こっちはアイロス・フュードマン。この街で賭け事ばっかりしてるレーサーです」
「おい、レディの前で間違えんなよカケル。ただのレーサーじゃねぇ。この街で一番の、超一流レーサー……だぜ? 麗しいお嬢さん」
「街で一番の愚かな頭脳であることは理解したわ」
容赦のないゼナイダの物言いに眉を顰めるアイロスは、カケルを手招きするとそっと耳打ちする。
「おい……なんなんだこの失礼な女」
「ま、まぁ悪い子
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