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超速閃空コスモソード
第2話 砂漠の惑星ロッコル
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の惑星アースグランドの一国家『ジャパン・エンパイア』の出身で、パイロットとして徴兵されるまでは曲芸飛行士として活躍していたと――」
「――その頃から。今も。彼はずっと、目に映る人々の笑顔を願い続けていた。強硬な軍部への反発から、脱走者が絶えないと言われていた現地徴用兵でありながら……彼がパイロットとして戦い続けていたのも、自分の戦いが人々の笑顔に繋がると信じていたからだ」
「……っ」

 ようやく部下と目を合わせた男は、皺の中に隠された鋭い眼差しで彼女を貫いた。その威厳と言葉の重みに触れ、部下の女性――ゼノヴィアは息を飲む。
 コズミシア星間連合軍総司令官、ハリオン・ルメニオンの眼光は――歴戦の女傑すらも黙らせる覇気を纏っていた。

「――私達は、それを裏切った。政府の官僚共は彼をダシに内輪もめに明け暮れた挙句、彼を危険視するあまり暗殺まで企てた。軍部は彼の退役すら認めず、口八丁手八丁で彼を軍に縛り付けようとした。……そうなってしまっては、もはやあの少年が己の願いを叶える術は、一つしかない」
「それで……そのような、ご決断を……?」
「この星は……いや、宇宙は。彼の力あってこその平和に満ちている。誰にも異論は許されぬはずだ」
「いいえ……いいえ! だからと言って彼という存在が、辺境の惑星で朽ち果てるなど……! あってはならないことではありませんか!?」
「コルトーゼ将軍。ラオフェン・ドラッフェはその役目を終えた。……そろそろ、眠らせるべきだとは思わないかね」

 ハリオンは諭すような口調で宥めるが――ゼノヴィアは唇を噛み締め、引き下がる気配を見せない。彼はそんな部下の姿を見遣ると、再び視線を街並みに戻し、独り言のように呟いた。

「――そんなに納得がいかないのであれば、直に彼と話すといい。彼なら今、惑星ロッコルにいる」
「……惑星ロッコル……!」

 その名前が出たことで、ゼノヴィアは目を剥く。そんな彼女の様子を見遣るハリオンは、スゥッと目を細めた。

「うむ。――君の娘の、配属先だな」

 ◇

(最悪、ね)

 配属先が発表されてから一ヶ月。悪い夢であって欲しい、と何度願ったか。
 ゼナイダ・コルトーゼは宇宙に浮かぶ砂漠の星を見つめ、暗闇の海の中で深く溜息をつく。ヘルメットに収まるミドルヘアの髪が無重力により、その視界の隅でふわりと揺らめいた。

 彼女を乗せた白銀のコスモソードは、緑で縁取りされた翼で宇宙を切り裂き、眼前の不毛の土地を目指す。
 母譲りの藍色の髪や翡翠色の瞳。色白の肌に類稀な美貌。全てが男の劣情を揺さぶる色香を放っているが――その表情は死人のようであった。

 その理由は、自身がコズミシア星間連合軍の名将、ゼノヴィア・コルトーゼの娘でありながら、ロッコルという辺境中の辺境惑
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