暁 〜小説投稿サイト〜
超速閃空コスモソード
第2話 砂漠の惑星ロッコル
[1/10]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ――星霜歴2028年。
 UI戦争の終結から三年の月日を経た、この時代の中で――人類は驚くべき早さで復興を遂げ、半世紀前の栄華を取り戻しつつあった。

 軍部はこの戦争の勝利を経て、次なる脅威に備えて軍拡を推し進めている。
 半世紀に渡る戦争で失われた優秀なパイロット達の穴を埋めるべく、次世代のエース育成を目指した訓練を積極的に取り入れるようになっていた。

 そして――UIと共に宇宙から姿を消した「ラオフェン・ドラッフェ」の名は、救世主として今も人々に語り継がれている。
 軍とは無関係の教科書にまでその名が載り、彼に救われた星の住民の間では、ラオフェンを軍神として祀る宗教まで台頭するほどであった。

 この全宇宙に、ラオフェン・ドラッフェを知らない者はいない。――だが、その名が知れ渡ったところで、その少年はもはやこの世にはいないのだ。

 ――エースパイロットがいない時代こそ。彼自身が願った、人々が望む平和な世界なのだから。

 ◇

「それは――本当なのですか!?」

 青い空の下に広がる一大都市。宙を飛ぶ車が飛び交い、多種多様な種族の宇宙人達が道行く街並みが、男の視界に広がっている。
 その後ろで叫ぶ女性は、その男の背を真摯な瞳で射抜き、彼の真意を問うている。

 髪の色、目の色、尻尾の有無。ありとあらゆる部位が異なる異星人同士の交流を見下ろす男は、彼女に視線を合わせることなく――この超高層ビルのガラス壁から、平和を謳歌する人々の営みを見守っていた。
 ――かつて自分が見出した少年が、全てを賭けて守り抜いた世界を。

「ああ。……あれから、もう三年になる。彼と共にあらゆる宙域で戦ってきた君なら、知る権利はあると思ってな」
「どうして、なぜそんな……! 彼ほどの英雄を、そんなことで野放しにするだなんて!」
「――出来る限りの望みを叶えたい、と彼に言ったのは君だろう。今がその時だと、私は思うのだがね」
「だからと言って、そんなこと……!」

 自分の言葉に動揺し、憤慨する部下を一瞥もせず。白髪の男は皴の寄った口元を緩め、未来ある子供を抱く人々を見つめる。
 彼の瞳に映る人々の暮らしだけが、彼の全てであるかのように。

 ――全宇宙を束ねるコズミシア星間連合政府。その中枢である第一惑星アースグランドの首都「へレンズシティ」に住まう人々は、彼に見守られながら平和のひと時の中に生きている。
 かつて「ワシントン」と呼ばれていたこの街は、コズミシア星間連合軍の本拠地となっており、数多のパイロット候補生がこの近辺の基地で訓練に励んでいる。
 男がふと視線を上げた先では、コスモソードの練習機が沖の向こうで激しい訓練に臨んでいた。

「コルトーゼ将軍。彼の生い立ちは知っているかね」
「……はい。こ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ