第1話 ラオフェン・ドラッフェの伝説
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決着で納得できるわけッ――!?」
その先の言葉は続かなかった。
一瞬のうちにセドリックの意識を刈り取る、ラオフェンの拳。腹部に伝わる衝撃と圧力が、男の視界を、意識を、暗黒の中へ沈めて行く。
「こ、のっ……自信過剰野郎がッ……!」
「……」
視界が薄れて行く中でも、セドリックは両足を震わせ――崩れ落ちながら。憎々しげに声を漏らし、表情の見えないラオフェンを睨み上げる。
少年は、そんな彼を抱え――表情には、一瞥もせず。無言で歩み寄る整備班に、彼の身柄を託した。……あれほど猛り狂っていた宇宙海賊はもう、指一本動かさない。
「……では、大尉。どうか――ご武運を」
「ああ。……今まで、本当にありがとう」
そして、行く手を阻む者がいなくなり。ラオフェンは今度こそ、整備班の面々に見送られ、自身の乗機に身を投じた。
純白の機体を囲む、赤い縁取り。加速タイプの証である、速さを追求した流線型のフォルム。その機械仕掛けの赤い鳥が、宇宙という大空へ羽ばたいて行く。
――その鳥が、巣に帰ることは、もう、ない。
◇
この日、星霜歴2025年。
約半世紀に渡り、人類を苦しめた外宇宙からの侵略者「ユナイト・インベーダー」――UI。彼らとの戦争は、ある一人の少年の手で幕を閉じられた。
その少年――ラオフェン・ドラッフェは。UIの最後の砦「ラスト・コア」と共に散り。救世主の伝説として、その名を後世に伝えられている。
――そう、伝えられていた。
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