第1話 ラオフェン・ドラッフェの伝説
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は現地徴用兵であり、職業軍人ですらないラオフェンは、それでも人類の平和のため、人々の笑顔のためにもと戦ってきた。だが、その先に待っているものが醜い権力争いだと思えば――暗くなるのも、無理はない。
◇
「……総司令官も、軍や政府の腐敗には悩んでおられる。上層部の力を持ってしても、この流れを押し留めることは叶わぬ……と」
「ええ。……わかっています」
艦長――ゼノヴィア・コルトーゼ将軍は、何も言う資格はない、と言わんばかりに目を伏せる。
自分一人が責めを受けることに免じて、他の者の過ちを許して欲しい――態度でそう示す彼女の横顔を、ラオフェンは切なげな苦笑を浮かべ、見守っていた。
「ドラッフェ大尉。――出撃準備が整いました」
その時。この艦橋に軍靴を鳴らして、一人の年老いた男が踏み込んでくる。ラオフェンとゼノヴィアの前で整然と敬礼する彼に対し、ラオフェンはいよいよかと表情を引き締めた。
「ありがとうございます。――必ず、あなた達を無事に家族のもとへ帰してみせます。あなた方整備班の、誠意に誓って」
「我らクルー一同、この戦争に勝利するために全てを捨てた身。……大尉こそ、必ず帰ってきてください。終戦の暁には、大尉を主賓に飲み明かすと部下どもに約束してるんです」
「そう思われてる、というだけでもここまで来た甲斐がありました。感謝しています」
老齢の整備士に敬礼を返し、ラオフェンは艦橋を後にする彼の背に続く。――最後に、ゼノヴィアの瞳を一瞥して。
「では――行きます」
「行ってくる――とは、言ってくれないのね」
◇
「ラオフェン! どういうことだ、これは!」
「どうもこうもない。これくらいやらなきゃ、お前は命令がなくても勝手に飛び出してくるだろうが」
「当たり前だ! この俺を誰だと思ってやがる!」
出撃を控え、乗機のコスモソードに歩み寄るラオフェン。そんな彼を待っていたのは、戦友の怒号だった。
ラオフェンの胸倉を掴む長身の男は、銀髪の短い髪を揺らしながら、紅い眼光で鋭く少年を射抜く。だが、その鬼気迫る表情を前にしても少年は眉一つ動かさない。
こうなることは、わかりきっていたのだ。
黒の機体に縁を青く塗装した、セドリックの乗機であるコスモソードは――整備班の手で厳重にテープで固定され、出撃できないようにされている。
犠牲を最小限に抑えるため、ラオフェン単機の出撃となるこの作戦においても、上の意に反して勝手に出撃しかねないセドリックを封じるため、ラオフェンが指示していたのだ。
「セドリック。宇宙海賊だったお前を戦力に引き込み、この艦に乗せてるのは強力な戦力が一つでも欲しかったからに過ぎない。本来ならとっくに、安全な牢の中で終戦を待っていればいい身なんだ」
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