第1話 ラオフェン・ドラッフェの伝説
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れない。
そういった理由から、軍の上層部がその作戦を決行することは稀であった。現場にいない高官達は、UIの脅威を正確には理解していないのだ。
――だが、陽動作戦がUI駆逐の主戦術とならなかったのは、単に予算だけが原因というわけではない。
このUIとの戦争で真価を発揮した高速宇宙戦闘機「コスモソード」の登場が、運命を変えたのだ。
尖兵達の反応速度を超える速さで宇宙生物の大群を掻い潜り、脆弱な「核」に接近し、直接討つ。何千万という宇宙生物の妨害の只中を、速さだけを武器に突っ切る――という半ば特攻のような作戦。
それを、艦長の隣に立つ少年――ラオフェン・ドラッフェが、実現してしまったのである。パイロットの生還率は絶望的であるものの、陽動作戦からのレーザー狙撃に比べれば遥かに安価。金にがめつい上層部が食いつかないはずがなかった。
さらに宇宙生物達が反応する前に背後に回れば、尖兵達の弱点である背中を撃つこともできる。「コスモソード」にしか出来ない強襲作戦は瞬く間に広まり、戦場を席巻するに至った。
――が。それが実を結ぶケースはほんの一握り。大半のパイロットは生還はおろか「核」に辿り着くことさえ叶わず、激突の恐れから減速したところを尖兵に囚われ、その牙の餌食となった。
より多くの兵を生かすために身を粉にしたラオフェンが編み出した、コスモソードの戦法が――より多くの兵を殺す事態を、招いたのである。捨て身の突撃で幾百もの「核」を撃ち抜き、人類に希望を灯したラオフェンの実績を「ダシ」にした高官達によって。
それでもラオフェンはコスモソードを駆るパイロットの筆頭格として、各星系を転戦。UIを追い詰め、とうとうUI最後の砦「ラスト・コア」との決戦を控えるに至ったのだ。
半世紀に渡る無益な戦いに、ようやく終わりが近づいている。
――にも拘らず、その表情に明るさがないのは。高官達が自分達の後ろで繰り広げている「内紛」が理由だった。
超人的な操縦センスを持つラオフェンの奮戦により、人類の領域は九分九厘奪還された。それにより「戦争の終わり」が見えてきたことで、高官達による戦後の地位を巡る権力争いが起きているのだ。
人類を守る矛であるはずのコスモソードは、前線で戦うラオフェン達の後ろで、模擬戦という名の代理戦争によってパイロット共々消耗されている。その「コスモソードによる模擬戦」で威光を示し、勢力を伸ばしている官僚や将官は、当然ながら戦争の立役者であるラオフェンにも目を付けていた。
終戦を迎え次第、自らの傘下に加えようと企む者。単なるエースパイロットには到底収まらない功績と名声を持つ彼を危惧し、暗殺しようと画策する者。安全地帯で甘い汁を吸う彼らは、揃って自分の利益のみを追求していた。
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