第1話 ラオフェン・ドラッフェの伝説
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」
「いえ、そういう任務ですから。……他の部隊も、無事に離脱できましたか?」
「ああ。貴君らの働きが功を奏し、皆無事に戦域を離脱している。……あとは、奴らの『ラスト・コア』を討つのみだ」
星屑の海を一望する艦橋。その中で艦長の座に腰を下ろす妙齢の女性が、傍らに立つ少年に賛辞を送る。
藍色の艶やかな長髪を纏め上げ、凛々しくも猛々しい翡翠色の眼差しを持つ色白の美女。彼女の目に映る、十六歳前後といった容貌の黒髪の少年は、これから「死地」に赴く戦士とは思えないほどに落ち着いた物腰で、宇宙の彼方を見つめていた。
――この空の中に漂う船は、彼らを載せるこの一隻のみ。他の艦隊は皆、傷つき戦う力を失い、この戦場から退いていた。
「『UI』……ユナイト・インベーダー。五十年以上に渡り、我々人類を脅かしてきた侵略者達との戦いが、今日をもって幕を下ろす。……その歴史的瞬間に立ち会えるとは、私も果報者だ」
「息を吐くようにハードル上げるの、やめてくれません? 次の出撃であっさり落とされたら、笑えないじゃないですか」
「君がそんなつまらない死に方をするとは、私は思わないよ」
この艦に身を置いている戦士達は全員、人類を脅かす外宇宙の侵略者を討つべく、決死の覚悟で志願してきた猛者ばかりだ。
各々の配置につき、己の任務に忠実に従う彼らは――畏敬の念を込め、少年の表情を一瞥している。
「次の出撃が、正真正銘、最後の戦いになる。……君がこの宇宙に勝利を刻んでくれた暁には、我々で出来る限りの望みを叶えたい」
「――オレが望むものは、皆の笑顔。それだけですよ。パイロットとして戦うことになった日から、それはずっと変わらない」
「ラオフェン大尉……」
少年の言葉に含まれたニュアンスが、艦長の顔色を曇らせる。彼の云う「人類の平和」は――守るべき人々の手で、乱されていた。
◇
――球状の巨大な「核」をコロニーとし、無限に増殖して人類を襲う宇宙生物「ユナイト・インベーダー」、通称「UI」。何千万という尖兵に守られた「核」が一つの星に近づくだけで、その星の人々は残らず尖兵達の食料になると言われていた。
人類は大軍を率いてこれを迎え撃つが、無尽蔵に発生する尖兵達との戦いに疲弊し、五十年の時の中で徐々に追い詰められていた。
――前方からの攻撃に対し、絶対的な防御力を持つ装甲を備えた尖兵は、宇宙艦隊の巨大レーザー砲の掃射から「核」を守り。非戦時は全員で「核」に張り付き、装甲の繭で超長距離からの狙撃を防ぐ。
大艦隊の陽動で尖兵をおびき寄せ、「核」から離れた瞬間を狙い撃つ――という作戦も打たれたが、「核」を破壊できる狙撃レーザー砲自体が一発ごとに莫大な予算を失う上、大艦隊と同時に運用するとなれば大赤字を免
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