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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九話 ガイエスブルク要塞へ
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えたのだ。報告を急ぐ必要は無いと」
「第九、第十一の二個艦隊はあと一週間もすれば帰ってくるんだったな」
「そうだ、そして待った甲斐は有った。ヴァレンシュタイン元帥重態説には根拠が無いと分かったからな。であれば出兵の可能性があるなどと報告する必要は無い、違うかな」
「そうだな……、君の言う通りだ」
トリューニヒト政権に対する同盟市民の支持率は非常に高い。前政権が三十パーセントほどの支持率しか得なかったのに対しフェザーンを得た直後と言う事もあり七十パーセントを超える支持率を得ている。
これだけの支持率があるから出兵論を抑える事が出来る。だが時間が経てば当然支持率は下がるだろうし、出兵論は勢いを増すだろう。そんな時に軍が出兵に賛成していると言う意見が出たらどうなるか……。シトレの、軍の恐れを意味のない事と笑う事は出来ない。
「レベロ、君は怒っているか、何故二週間前に報告をしなかったと。自分を信じないのかと」
シトレが私に問いかけてきた。静かな穏やかな目をしている。
「……いや、そうは思わない。知っていれば何処かで私はそれを言っていただろう、出兵論など可能性が有るだけだと。主戦論者にとってはその可能性だけで十分なのにな」
「そう思ってくれるか……、有難う。あの時の君の気持が分かったような気がする」
あの時? あの時か……。君が統合作戦本部長をやめた時、私が君をブレーンにと望んだ時、そして君が私を非難したとき……。
「君が私を信じていないわけではなかったのだろうと今回の事で理解できた。可能性がある以上リスクは回避しなくてはならない。そのためにああしたのだろうと」
「だが私は失敗した。シャンタウ星域の会戦が起きたのは誤った人物を宇宙艦隊司令長官にしたからだ。その責任は私にもある」
リスクを回避したつもりだった。だが結果はより酷いものになった。私はリスクを回避するつもりでより大きなリスクを抱え込んだ事に気付かなかった。
「そうだな、確かに判断は誤ったかもしれない。だが私はあの時君が私を信頼していないと非難した、それは間違いだったよ。許してくれ、私は君に酷いことを言ってしまった……」
シトレが首を横に振っている。あの時の自分を責めているのかもしれない。
そうじゃないシトレ。君はあの敗戦で全てを失った。軍人としての名誉、名声、地位、権力、その全てを。私を非難するのは当然だ。私がその立場でも非難するだろう。君は当然の権利を行使したに過ぎない。だがそれでも君は私を助けてくれる。君こそ信頼に値する人物だ。
「シトレ、私は良いブレーンに、友人に恵まれたと思う。これからも私を助けてくれるだろう?」
「ああ、もちろんだ」
手を差し出すとシトレは私の手を握ってきた。大きな手だ、力強い手でもある。信頼でき
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