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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九話 ガイエスブルク要塞へ
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「根拠は無いか、これで出兵論も下火になるだろう、一安心だ。それにしても報告が遅いような気がするな。トリューニヒトから軍に出兵論の検討依頼が有ったのは三週間前だろう」
「……」
先程まで笑っていたシトレが無表情に沈黙している。どういうことだ? 何か有るのか……。
「シトレ、君は何か知っているのか?」
「……軍は故意に国防委員長への報告を遅らせたんだ。彼らが結論を出したのは二週間前だ」
「どういうことだ、何故二週間も報告を遅らせる? 何の意味があるんだ、シトレ」
思わず彼を責めるような口調になっていた。だがシトレは無表情なままだ。
「当初、軍は二つの可能性について報告しようとしていた。一つはヴァレンシュタイン司令長官が自ら指揮を取った場合だ。この場合は元帥の重態説が誤りだったと言う事になる。おそらくは内乱は早期に鎮圧されるだろうから当然出兵論は不可だ」
「となると、もう一つは元帥が指揮を取らなかった場合……、つまり元帥の重態説が事実だった場合だな」
私の問いかけにシトレは頷いた。
「君の言う通りだ。その場合は密かにイゼルローン方面に艦隊を動かし様子を見るべきだと考えていた。勘違いしないでくれよ、レベロ。彼らは無条件に出兵論に賛成しているわけじゃない。出兵は危険で出来る限り避けるべきだと考えている。だから帝国が内乱鎮圧にかなり梃子摺る、そう判断できた場合にのみ帝国領再侵攻の可能性があると考えたんだ」
「捕虜交換はどうなる。軍はそれを望んでいたはずだろう?」
「内乱鎮圧が遅くなる、つまり捕虜交換は先延ばしになると言う事だ。それまで主戦論を抑えきれると思うか? トリューニヒトが出兵論の検討をしろと言ったのはそういうことだろう」
思わず溜息が出た。この国の主戦論の根強さとは一体何なのだろう。シャンタウ星域の会戦であれだけの大敗を喫しても未だ戦いたいと言う人間が居る。そしてその声は決して小さくない。
「分かった。だが君はまだ私の問いに答えてはいない。何故報告が遅くなった?」
「恐れたのさ」
「恐れた? 妙な事を言う。何を恐れたと言うのだ?」
私の問いにシトレは微かに笑みを浮かべた。何処かで見た事がある笑みだ。そう、あれは彼を私のブレーンにと誘ったときだった。あの時と同じような笑みを浮かべている。暗い笑みだ。
「軍が出兵に賛成していると言う意見が一人歩きするのを、利用されるのを恐れたんだ」
「……」
「彼らは出兵には反対だ。だが可能性が有るのは認めた、それだけだ。出兵に賛成などしてはいない。だがそう受け取られる可能性が有ると恐れた」
「……」
「どの道、軍を動かすのであればフェザーンから第九、第十一艦隊が戻ってからに成る。であれば彼らが戻ってくるぎりぎりまで帝国の状況を見るべきだと考
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