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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百九話 ガイエスブルク要塞へ
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す。そして貴族連合と一戦し撃破する。辺境星域の平定も含めて三月末までにはこの内乱を終わらせたいと考えています」
三月末、その言葉にまた会議室にざわめきが起きた。ガイエスブルク要塞に篭る敵本隊だけでなく辺境星域も含めてとなればかなり忙しい。司令長官は自由惑星同盟政府を信用していない。ロイエンタールに言ったようにこちらが不利となればかなりの確率で出兵すると見ている。
「質問はありますか? ……無ければこれより二時間後、ガイエスブルク要塞に向かいます。各司令官は直ちに艦隊に戻り準備を整えてください」
そう言うと司令長官は立ち上がった。我々も一斉に起立し敬礼をする。司令長官は答礼すると我々一人一人確認するかのように会議室を見渡した。
宇宙暦 797年 2月 25日 ハイネセン 最高評議会ビル ジョアン・レベロ
「いいのか、レベロ。此処は評議会議員以外の立ち入りは禁止だろう」
部屋に有るソファーに腰掛けながらシトレが話しかけてきた。
「君は私のブレーンだろう」
「なるほど、そうだったな」
最高評議会ビルは原則として評議会議員、及びそのスタッフの立ち入りのみが許されている。それ以外には事前に申請が必要で許可を得た者のみが立ち入る事が出来る。シトレは私のブレーンだ、フリーパスの状態で此処まで来たのだがその事がどうも納得がいかないらしい。
「大体此処は財政委員長に与えられた部屋だ。此処まで来て言う言葉でもなかろう」
「まあ、そうだが」
シトレが微かに身じろぎした。元々軍人だからこのビルに来る事を出来るだけ避けてきたと言う事も有る。居心地が悪いのかもしれない、落ち着かないのだろう。
「それでどうかな、シトレ。帝国への出兵は」
「軍は出兵は不可との結論を出した。やるなら二ヶ月前、いや内乱勃発と同時に行なうべきだった。ヴァレンシュタイン司令長官が負傷した時にだ。今からでは遅い、何の意味も無いだろう」
「内乱勃発か、しかしそれは」
「捕虜交換を否定する事になるしフェザーン方面での軍事行動も不可能となる。つまりどの道出兵論など不可能と言う事だ。トリューニヒト議長にも国防委員長経由で報告が行く筈だ」
「行く筈?」
「ボロディン大将がネグロポンティ国防委員長に今報告している。議長に報告が届くのは早くともあと一時間はかかるだろう。議長よりも先に結果を知る気分はどうだ?」
シトレはそう言うと悪戯っぽく笑った。
「悪くは無いな。それに軍が反対してくれたと聞いて安心したよ。出兵論など馬鹿げている」
「ま、同感だな。帝国軍宇宙艦隊はヴァレンシュタイン司令長官の命令に従いガイエスブルク要塞に向かっているらしい。ヴァレンシュタイン司令長官自身もだ。重態説は何の根拠も無いということだろう」
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