仮想現実に閉じ込められたアラサーの私
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と言った。
うわぁ、いい人だこの人。
というわけで、私は黒髪の男にこのゲームの事をレクチャーしてもらう事にした。
勿論、赤髪の男も含めてである。
このゲームの大まかな説明を受け、ソードスキルやファーストモーションについての話などを色々してもらった。 二人はこのゲームの事を全くと言っていい程知らなかった私に対して驚きを隠せずにいた。しょうがないじゃないか、調べていなかったのだもの。
それでしばらく青い猪(フレンジーボアとか言う奴らしい)を狩りに狩って狩りまくり、狩り尽して狩り果たそうとしていたのだが。
そこで赤髪の男――クラインが言った。
「俺そろそろ落ちるわ、五時半にピザ頼んでるからよ。それにしてもマジサンキューな、キリトにティグ。これからも宜しく頼むぜ」
「こっちこそ宜しくな。何かあったらメッセージで呼んでくれ」
さらっと関係続行を宣言したクライン。この後一人になったらフレンド解除して関係を無くそうと思っていたのに。やはり現実は甘くない。そしてそれを否定せず、むしろ肯定するキリト。こいつ、もしやネットの怖さを分かっていないな……? あ、ネットじゃなくてゲームか。それでもほとんど同じ事なのだろうけれど。あ、これネットゲームだったわ。そうかそうか、二つとも内包していたか。はいはいそうですか。
まあ結局私は、フレンド解除して消息を絶つのだろうけれどね。
でも、お別れの言葉くらいは言っておかないと。
「ああ、宜しくな」
お別れの言葉は、優しい言葉にしないとね。
そしてクラインはメインメニューを開いた。
キリトは下がって、クラインと同じようにメインメニューを開いた。
私はまだログアウトする気は無いので、ここから立ち去ろうと踵を返して歩き出した。
が。
残念な事にそれはできなかった。
「あれ、ログアウトボタンがねぇぞ」
………は? 初日でバグ?
やれやれ、運営は一体どうした。これくらいの初歩的なミス、普通は起こさないだろうに。KYTぐらいしたらどうだ。あ、業種が違うか。
まあでも、ログアウトできないというのはとんでもない事だ。ログアウトできないという事はつまり、現実に戻る事ができない。仮想世界に閉じ込められてしまい、監禁されてしまったのも同義なのだ。今頃GMコールが荒ぶっていて、運営は半泣きでデバッグしている事だろう。
「いやいや、そんなわけないだろって……本当だ、無いな」
一応私も確認してみる。
人差し指と中指を真っ直ぐ揃えて真下に振り、メインメニューを呼び出す。
そして、メインメニューの一番下を表示させるべく、指を滑らせる。そして、最下部まで到達した。
正直、驚いた。
「……無い…?」
そう、無いのだ。本当に
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