仮想現実に閉じ込められたアラサーの私
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していなし、そもそもログインしてものの数分だし、勝ち目は無さそうだ。
というわけで、全速力で逃げようとした。逃げようとしたのだが………。
つまずいた。
あー死んじゃうなーなんて思いつつ、もう間も無く目の前に迫ってくる青い猪を見ていたのだが。
急に身体が動いた。
そう。何の前触れも無く、急に身体が動いたのだ。そして、目の前に迫った青い猪を、私が持つ初期装備の剣が、自動で動く身体とともに切り裂いたのだ。
まさか、これがソードスキルというものなのか……?
なんて思っていたら、青い猪は断末魔を響かせ、ポリゴンになって砕け散った。そして、少量ながら経験値とゲーム上の通貨のコルを獲得したのであった。
先程の、声が聞こえた方を見やった。
すると、いつの間にかその声の主であろう赤い髪の男と、他にもう一人、黒い髪の男がやってきた。
「いやー悪い! フレンジーボア狩ってたら狩ってない奴が急にあんたを認識しちゃってさ」
何か、軽いな。それが赤髪の男の第一印象。
「たまにそういう事もあるから、気をつけろよクライン」
何か、普通。それが黒髪の男の第一印象。
男といっても、ネカマという輩はこのゲームにも少なからずいるのだろうし、確実にこいつらが男という確証は得られないのだが、私にとっては別にどうでもいいし、何より私も性別を偽っているのだし。まあ私の場合、変態に襲われないようにする為に性別を男にしたのであって、不審者に襲われないようにする為にアバターを男にしたのであって、ネカマのような思考回路から偽ったわけではない。私をネカマと同じ扱いはしないでいただきたいものだ。
「それにしてもあんた、あの土壇場でよくソードスキル繰り出せたな!」
ああ、やはりあれはソードスキルだったか。でも私は、ソードスキルの発動条件がよく分かっていない。恐らくファーストモーションなるものが関係しているのだろうけれど、しかしそれが分からない。モーションでファーストと言うだけあって、最初の動きという事なのだろうが、それにしてもその最初の動きが分からなければ話にならない。
「すまん、そのソードスキルっていうのは何だ?」
ソードスキル自体何なのかは薄々理解しているが、敢えて問うた。
「な、あんた知らずに使ったのか?!」
こんどは黒髪の方が驚きの声を上げた。何だ、そんなに驚く事か。
まあいい。これもいい機会だし、所詮表面上なのだし、教えてもらう事にしよう。まあ、こいつらが了承してくれたらだけどね。
「私……、俺はこの手のゲームは初心者なんでね。そっちがいいのなら、そういう事を教えてはくれないか?」
そう訊くと、黒髪の方は間髪入れずに、
「ああ、いいぜ」
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