仮想現実に閉じ込められたアラサーの私
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れたわけだけど。
それにしても、「帰ってきた」というのは、些か不自然な言葉だ。普通「帰ってきた」じゃなくて「やってきた」だろうに。この世界こそが正に自分の住む世界なのだと、そう主張しているようだった。何だ、何だろうか。現実で辛い事があって、この世界が拠り所になっているのだろうか。この世界に縋っているのだろうか。それならば奴は愚者だろう。愚者であって愚者に過ぎない。現実に辛い事はこれでもかと言う程に存在する。その辛い事は自身で打破していかなければならないというのに、奴はその義務を無視し、逃げ込むようにして仮想現実に入り込んだのだろう。私の会社でもそうだ。私は新入社員が辞めていくところを何度も見てきた。無理のある尤もな理由で自身を正当化させ、辞表を提出する社員を何度も見てきた。奴らは皆平等に愚者だ。現実を目の当たりにし自ら挫折した愚者だ。碌に何もしないで辞めていった愚者だ。私は、そういう奴らが嫌いだ。嫌いで嫌いでしょうがない。だから平等に、私は「帰ってきた」とほざいていたあの輩が嫌い………あ、違うか。奴はもしかしたらβテスターなのかもしれない。で、一度来た事があって、それで「帰ってきたんだ」と勢い余って言ってしまったのだろう。そうかそうか、私の思い違いでしたか。私の考え過ぎでしたか。そうですねごめんなさいね。
取り敢えず、フィールドに出た。
私の視界に入るは、広大な平原、生い茂る木々、澄み渡る青い空。ログインしてから思っていた事だが、これがゲームだと実感が湧かないし、思えない。というより、思いがたい。現代の科学はこれ程進歩したのか。現代のゲームはこんなに進化していたのか。正直驚いた。自分は今まで音ゲーぐらいしかしてこなかったので、この手のゲームに疎かったのだが、それでも感動はした。
背中に背負っている初期装備の剣を鞘から抜いた。背中に背負っていると刀身が長い場合、絶対に鞘から抜けないと思うが、初期装備の剣はそれ程長くは無かったので、抜き出せた。
振ってみる。
それ程大きくないという事もあって、結構振りやすい。私のような初心者には重宝する事だろう。
そして、先程近くを通り過ぎた男二人組みが、ソードスキルとか何とか言っていたが、ソードスキルとは一体何なのだろうか。
と、その時。
「危なぁああーーい!! 避けろぉぉおおおーー!!」
遠方から聞こえる叫び声。はて、何があったのだろうか。
声が聞こえた方を向いた。そして私の目に入ったのは、私の方に鬼気迫る勢いで迫ってくる青い猪だった。その姿は、正に猪突猛進。
「はあ!?」
思わず声を上げてしまった。
しかしその間にも猪が迫ってくる。考える暇はそれ程無い。
迎え撃つか、それとも逃げるか。
いや、ここは逃げるのが妥当だろう。下手に迎え撃っても、碌に練習
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