仮想現実に閉じ込められたアラサーの私
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勢のプレイヤーを騙す事も同義である。
まあ、仕方ないか。
そう思い私は、アイテムストレージに入ってある《手鏡》をオブジェクト化し、覗き込んだ。
すると間も無くして、白い光に包まれた。その光の中で私の身体は、作ったアバターのものから現実のものへと変貌してゆく。そして光が消え収まった。私の身体は、紛れも無く現実のそれになった。
「女!?」
「女!?」
反応するところそこかよ。やっぱあんたら紛れも無く男だよ。
「し、しかも黒髪ロングで長身でスタイル抜群だとぉ!?」
「クライン落ち着け!!」
キリトが、興奮しているのか驚愕しているのかよく分からないクラインを落ち着かせると、キリトが私に訊いてきた。
「ティグ、あんたはどうする?」
どうする、というのは、私がキリトに付いていくかどうかという事だろう。
そりゃあ、付いていくに決まっている。
「私は………キリトに付いていくよ。その方が、心強いしね」
まだあどけなさを残す少年に今後の事を色々教えてもらい先導してもらえるのはとてもありがたいのだが、しかしそれだと私に何かあった場合、彼は自分の所為だと思ってしまう事だろう。だからそういう面について少しばかり葛藤したが、それでも今は先を行き、自己を強化していくのが最優先だと感じたので、私はキリトに付いていく事にした。
口調の変化に少し戸惑いつつもキリトは、そうか、と言った。
そしてクラインの方に向き直った。
「……それじゃあクライン、またな。……ティグ、行こう」
「………ああ」
方角にして北西。次の村へと歩みを進める。
「キリト! ティグ!」
クラインが声を投げ掛けた。
「キリト! おめぇ、けっこうカワイイ顔してやがんな! 結構好みだぜ! ティグ! おめぇは質の悪い男に絡まれないように気をつけろよ! スタイル抜群なんだからな!」
それは誉め言葉として受け取ってもいいのだろうか。正直迷ったが、ここは誉め言葉として受け取っておく事にする。
そして私はクラインと同じような言葉を、クラインに返した。
「あんたも、牢獄送りにならないようにする事だね」
それに続いて、キリトも返した。
「お前もその野武士ヅラの方が十倍似合ってるよ!」
そしてキリトは前を向き、北西へと、駆け出した。
私もキリトに続いて駆け出した。
よく見ると、キリトは歯を食いしばっていた。やはり、情けなくて仕方ないのだろう。だけど私は、そんなキリトに何も言わず、ただ見ているだけだった。
慰めの言葉を言って何になる。それだとただ同情しているだけではないか。私はいつからか、同情はしないと心に決めているのだ。同情したところで、当の本人が更に悲しむだけなのだ。
だ
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