仮想現実に閉じ込められたアラサーの私
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まれるなんて思っても見なかったのだろう。そう。それは、報道番組で殺人事件のニュースを見ている視聴者のような心理的状態だ。殺られるのは嫌だが、自分が殺られるとは思っていないのだ。
「クライン、ティグ、ちょっと来い」
キリトに腕を?まれ、引っ張られて歩き出す私とクライン。
荒れ狂う冬の日本海(音限定)のような人垣を抜けて、キリトに引っ張られるがままに街路の一本に入り、馬車の陰に飛び込み隠れる。
そしてキリトが話し始めた。
「いいか、よく聞け。俺はすぐさまこの町を出て、次の村に向かう。二人も一緒に来い」
……はい? 関係を続行しろと? この薄っぺらい関係を?
キリトの話をまとめるとこうなる。
この世界で生き残っていく為には自己をひたすら強化しなくてはならない。《はじまりの街》周辺のフィールドは、同じ事を考えている奴らに狩り尽くされて、じきに枯渇する。だから今の内に次の村を拠点にした方がいい。道も危険なポイントも全部知っているから安全にたどり着く事ができる、と。
なるほど、これは心強い。この場合、関係を絶ち切るとか言わずに、このままキリトについていった方がいいのではないのだろうか。というか、見た限りキリト、は恐らく中学生。変態のような行動はしないだろうし、例えそのような考えに至ったところで、行動に移す勇気は、彼は持ち合わせていないだろう。
クラインはキリトの発案に乗るかと思いきや、それを断った。どうやらこのゲームに、他のゲームで仲間だった奴らがいるようで、そいつらを置いていくわけにはいかないとの事だった。
ほう、中々の仲間思いじゃないか、クライン。
よって、クラインとはここで別れる事となった。
「そうか。なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージを飛ばしてくれ」
キリトは落ち込んでいるようだった。まあその気持ちも分からなくもない。ゲームでできた友人と別れるて、心配になる気持ちは、いかに現実主義の私であっても分かるものは分かる。でも、それは知識上であって、現実に友達なんていないので、経験した事なんて一度も無いのだけれど、まあそれはそれとして。
「ああ、だがその前に……」
「…………? どうした?」
クラインは私の方を向き、今私に問うべき尤もな事を問うた。
「ティグ、おめぇってアバターをリアルと同じにしていたのか?」
………ああ。
そういえばあの時、《手鏡》をオブジェクト化するのを躊躇していたんだよね。
どうしよう、現実の姿に戻ろうか、正直迷う。
変態とか不審者が寄ってこないか心配だが、キリトやクライン、その他大勢のプレイヤーはその《手鏡》の効果によって既に現実の姿になっているわけであって、このまま私がSAOの為に作ったアバターで活動しようにも、それは大
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