仮想現実に閉じ込められたアラサーの私
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将来の夢
私に夢はありません。
将来就きたい職業なんてありません。普通に高校を出て、どこにでもあるような普通の中小企業に、普通に就職すればいいと思います。
将来したい事なんてありません。何事にも関心が無く、何事にも興味が湧かず、無機物の私は、何もせず普通に生活すればいいと思います。
例えば、自らの夢を叶えようとし、わざわざ田舎から上京してきた若者の、その大半は現実を目の当たりにし、夢を砕かれ闇を抱え、絶対的な絶望感に苛まれ、堕ちてゆくものです。
そう。
結局、そういう事なのです。
夢を抱くのは人の勝手ですが、そのほとんどが抱くにあたって現実を踏まえている事は、決してないのです。
夢は自己を固定させる観念に過ぎず、夢は自己の縋る場所に過ぎないのです。
夢は実に荒唐無稽で滑稽で、虚無であって欺瞞でしかなく、自己満足でしかないのです。
故に私は、夢を抱きたくないし抱かない。というかそもそも、空っぽな私には、夢を抱くという行為は実に重たい。現実主義な私には夢を見る事はできない。世の流れに身を任せて、任せて委ねて、委ねて動かなければいいのです。動いたって、結果は知れているですから。
よって私は、夢を見る者、持つ者、抱く者を、こう呼ぶ事にしようと思います。
夢しか見れない《弱者》、夢に縋る《愚者》―――と。
小学6年生の時の作文の宿題で、そう書いた記憶がある。確かそれを提出したあと担任に物凄く心配されたんだっけ。確かにその文章は小学6年生の女子が書いた物とは思えない。でもしょうがないじゃないか。私はそう思ったのだもの。少なくとも、私が心配される筋合いは、全くと言っていい程に無い。
さて、私は現実主義の正社員である。中小企業で働いているどこにでもいるような現実主義者である。どういう事かというと、特に目指す夢も事柄も無い私は、普通に普通科の高校に行きたかったのだが、親に普通科高校は就職先が無いと言われ、強制的に工業高校を目指す事になったのだ。中学校での成績はそれなりに良好だったので、その工業高校のレベルが低いという事もあり、案外すんなりと合格したのだった。因みに、学科は機械科。これも親の強制である。私としては、まあ別にどうでもよかったが、こういうのもありなのだろうと思い、工業高校生活を適当にやり過ごしていた。
卒業を間近に控えた私に襲い掛かるは、就職活動。襲い掛かると言っても、大企業に就きたいとか、高収入の仕事場で働きたいとか、そういう欲は私には当然のように皆無で、地域の中小企業にでも就けばいいかなという至極簡単な考えだったので、襲い掛かろうとも、正直言って簡単だったので、そんなものは簡単に撲滅できる。というより、できた。
特に目的も無く入社したその企業は、トヨタの下請けで、自動車の部品工場で
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