第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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。彼は胸元をつかみ、苦しく喘ぐ。
――みんな……みんな……みんな!!――
拒絶反応を起こし、心が締め付けられる。
弱肉強食の社会が訪れるのか?弱者は強者の糧となる責務を負い、そうでないものは存在自体に価値が出せない……嫉妬、憎悪、狂気、獣のように殺し合う、悪夢のような時代が――
「い……や……だ!」
そして、凱は震えながら、自分の使命が蘇るのを感じ取っていた。
『理想世界を先導する超越者―アンリミテッド―』に、目覚めの時が、訪れようとしていた。
眠れる獅子の……目覚めは近い。
◇◇◇◇◇
いつしか、あたりは夜になっていた。
凱はずっと空を見上げて、明るくなった満月の空と、月の光を浴びてほんのりと淡い光を放つ庭を眺めた。
定期報告と、今後における指示を何人かの部下に通達し、ティナは背後から凱に声をかける。
「ガイ?」
「ティナ……」
この美しい場所に、永遠に変わらないこの世界にとどまることが出来たら、どんなにいいのだろう。
だが、それではだめだ。
ひな鳥がやがて、親鳥から巣立つように、時代も、留まればそれだけ、『淀み』が生まれる。
そう、だから、凱はこういった。
「俺……いくよ」
ティナはその言葉を予測していたかのように、凱の顔を覗き込んだ。
「どこへいかれますの?」
「ブリューヌへ……俺は戻る……戻らなきゃいけない」
思い出した勇者の使命。そう凱が答えると、ティナは冷酷な視線と口調で凱を釘止める。
「今のあなたが一人、戻ったところで、戦いは終わりません。何もできませんわ」
それもまた事実だった。異端審問の際に取り上げられた獅子篭手、IDアーマー、ウィルナイフは、ブリューヌに置き去りのままだ。ジスタートの最北部であるオステローデからでは、もしかしたら間に合わないかもしれない。
『万軍』と『万軍』が衝突しあう戦争だ。その中に飛び込んで、自分一人は何ができるのか?
諜報部の報告では『鉛玉を吹く鉄の槍』や『連続して鉛玉を放つ乳母車』等、得体の知れない近代兵器が、テナルディエ軍にはあるという。
「思慮の無い行動は、愚者の所業です」
「そう……かもな」
違いない。よしんば辿りついたとしても、どのみちすべてが手遅れに違いないとも思えてしまう。
また、ティナが凱を引き留める為に言っているわけでもないことを、分かっていた。
『虚影の幻姫』は『幻想』ではなく『現実』を常に差し出す。だから凱は、自分を卑下にすることも、堂々とすることもできない。力を持った者は、もう『当たり前』の環境に逃れることなど許されない。
「俺は……『人を超越した力』の意味と答えを探して、
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