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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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眉を潜めて身を乗り出す。それは、報告の内容故にだ。挨拶などどうでもよかった。
『流星は逆星に砕かれた』このあたりは、何かのコードネームか何かだろうか。
かつて、ヴォジャノーイが凱の事を『銃』と呼んでいたように。

「詳細を」

ティナの短い口調は、竜の牙のように鋭くなる。

〈テナルディエ家は正式にて『叛逆決起』を声明!『銀の逆星軍』と公式発表!〉

〈ビルクレーヌ平原にて交戦の結果、ティグルヴルムド卿率いる『銀の流星軍』は、テナルディエ公爵の『銀の逆星軍』により敗北!『銀の流星軍』の主力部隊は敗走!ティグルヴルムド=ヴォルン、エレオノーラ=ヴィルターリア様、リュドミラ=ルリエ様は敗北後……捕縛!〉

最後の部分は、どこか歯ぎしりしたかのように聞こえた。その気持ちは、ティナにも察しがついている。

……まさか。その一言に尽きた。

以前の「ブリューヌへの突発的介入に関するエレオノーラの公判」において、自分はこう思考した。
もし、状況がこじれて、銀閃が何かしくじったとしても、自分がオステローデの戦姫として表に出て状況を押さえつけてしまえばよい、と。しかし、それはあくまで『貸しが作れる状況において……つまり、戦況がまだ均衡している状態での話』だ。
ジスタートが誇る保有戦力、一騎当千の戦姫を生け捕りにしてしまうテナルディエの軍勢。もうすこし均衡状態の続くのだと見込んでいたが、これはかなりの盤上狂わせだ。

(……現状だと、打てる手だてはありませんわね)

そんなティナの深刻さとは別に、アルサスの領主の名が出た時、凱は頭を殴られたような衝撃を受けていた。

――……ティグル!――

なおも緊迫した調子で、ティナと諜報部の会話は続く。もしかしたら、このために、あえて凱に聞かせたかったのかもしれない。
今の凱は、かつてないほど目が見開かれていることさえ気づかなかった。

(……ガイ?)

諜報部との会話を続けながら、ティナは凱を気遣うように見やう。それに構わず、凱の心は激しく震えだす。










――アルサス!――










何度も、何度も繰り返す地名は、凱にとって思い出ある地。
勇者の存在を肯定し、そして、『中心(ニース)』によって否定された発端の地。
凱はこれまで、自分が『幻想』の中にいたことを、だしぬけに諭さられる。
その地に本来なら平和に住んでいる者の顔が、次々と凱の視界によみがえる。
これまでの何日か、何週間か、何ヶ月か、思い出すことなかった顔が――

――ティグル!ティッタ!バートランさん!マスハス卿!ルーリック!エレオノーラ!リムアリーシャ!――

知っている者の名前。つぶやくたびに、凱の心に圧倒的な恐怖がのしかかる
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