第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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れない。
それとは別に、凱は感じた。この風景や幻想的な場所は、本来の彼女の気質なのだろう……と。
怖い気持ちも、普通の人間達の中で暮らす孤独もあじわうこともないのだろう。この場所が、『理想世界』ならどれほどよかっただろうか。
それでも……それでも……何かが違う気がする……
「いずれ……あなたは『答え』に辿り着くでしょう」
黒い髪の戦姫は、という獅子をなだめるように、深い声で言う。
「あなたは……あなた達は『理想世界を先導する超越者―アンリミテッド―』故に――」
「……アンリミテッド」
凱がティナの言葉を繰り返して、彼女は笑顔を見せてくれた。
『理想世界を先導する超越者―アンリミテッド―』……過去の時代にも、幾人かにそう呼ばれたことがあった。だが、それは凱のことだけではないらしい。その時代の子供達にも凱のように、そう呼ばれていた。
ヴァレンティナ=グリンカ=エステスは、この時代の超越者を何人か知っている。まだ全容は知り得ていないが。
一人は、この人『獅子王凱』
一人は、今のブリューヌをときめくヴォルン伯爵の侍女『ティッタ』
一人は、ブリューヌの双璧をなす大貴族の一端『フェリックス=アーロン=テナルディエ』
その3人だった。
違う種の不思議な感情が、凱の中で渦巻く。でも、神秘性を孕んだティナの言葉に、凱は追及しようと思わなかった。
「今は、ガイと一緒に過ごせる時間が増えたことは、嬉しい限りです」
「俺も……嬉しいさ。ティナ」
自分を愛称で呼んでくれるこの瞬間。頬をなでるような優しい声。男性特有の低い声でも、心に透き通る柔らかい声。
こんな和やかな会話が、ずっと続いてほしい。いや、欲しかったというべきか。
――そんな小さな優しい時間を打ち砕くように、機械的な呼出音が鳴り響いた――
通信器具。遠者と遠者の会話を実現し、肉声の受信と送信を可能にするものだ。
息抜きの時間にも当然なるわけで……ティナは『空気を読まない無粋な道具』とも評価しているという。
〈戦姫様に、ブリューヌに関する情報で、諜報部より通信です〉
従者がうやうやしく告げ、ティナは通信器具を拡声音状態へ切り替える。ブリューヌという単語に、何やら険しい表情を見せている。
――いやな予感がする――
本来なら公務の一環である定期報告は、凱に聞かせる必要などないはずだ。しかし、ティナの態度を見る限り、内乱の緊張状態は想定以上に深刻なのだろう。ブリューヌの一国土であるアルサスに身を寄せていた凱に対する同情からか、そうでないかは、凱にはわからない。
〈報告申し上げます戦姫様。『流星は逆星に砕かれた』〉
挨拶も抜きにぶつけられた言葉に、ティナは綺麗な
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