第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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か。
でも……
既に自分は死んだ身……そう思っているかもしれない。
時折、倒してきた敵が自分に追ってきて、その陰で凱を脅かす。自分を産んでくれた母さんと父さんに対するうしろめたさを感じ、それを思い出すと、凱の瞳から自然と涙が再びこぼれた。
ティナはいつもそんな彼のそばにいて、優しく微笑んでくれた。
「ガイ……お茶にしませんか?」
泣いている凱を見て、ティナはぽつりとつぶやいた。その手にはティーセットが用意されていた。
何も言わず、凱は小さくコクリとうなずいた。
なぜだろう。不思議と、凱は彼女の前で強がったりする必要がないように思えた。ティナはふたりきりでいる凱との時間は、何よりの公務の間の定期的休息になっており、そして、何より心休まるひと時でもあった。お互い、どことなく気づまりもしないし、気配りするような世話も焼く必要もなかった。
「……おいしい」
自然と、そんな言葉がこぼれた。紅茶の香りが、まるで心の傷にしみ込むかのようだ。
「お気に召しましたか?この紅茶の葉は、不安や緊張を和らげるそうです」
公私共に紅茶にこだわる凍漣の雪姫のように上手くいかないものの、ティナは自分で淹れてみた紅茶を、凱にそのように評価してもらい、少し満足げな表情をしていた。
今更思うのだが、ティナはやっぱり不思議な人だ……と凱は思う。後から考えてみると、独立交易都市との出会いや、今のような再会を望んでいたような気さえした。
まるで、勇者は自分からふたたび足を踏み出す瞬間を待っているかのような……
◇◇◇◇◇
「どうして俺は……この時代に流れ着いたのだろう?」
消え入るような儚い声で、凱はつぶやいた。
それは、なんとなく思い浮かんだ疑問だった。すると、ティナは訪ねる。「流れ着いた」という不可解な言い方に気にすることなく――
「ガイのいたい場所は何処ですか?」
「え?」
「帰りたい場所……望んだ場所……いるべき場所……あなたはどこにいたいのですか?」
「……俺の……いたい場所?」
地平の彼方へ沈む夕暮れをぼんやり眺めて、凱は聞き返した。
漠然とした彼女の問いに、自分とて捕えられない。彼女はにっこりと微笑む。
「あなたが、「ここにいたい」と言えば、私とオステローデはもちろん歓待致します」
いたい。俺はそれを口にしていいのだろうか?ふと思った矢先、彼女の竜具は何かの反応を示す。
「ほら、この子も喜んでますよ」
彼女の傍らにあるエザンディスが、慰めるようにオーロラのように空間湾曲させ、凱を魅了した。
たしかに、ここは平和で美しく心休まる場所だ。ジスタートで唯一隣国に接していないオステローデだからこそ……かもし
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