第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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感情で、現状を理解するにはもう少し時間がかかった。
どうして彼女がブリューヌに着ていたか……
ガヌロンの異端審問会の招致に応え、ティナがブリューヌを訪れた際、異端者がまさか凱だとは知らなかった。事の真相を解明する為に、ティナは竜技『虚空回廊』を使い、ガヌロンへの直行路を渡ったという。
そして、天運味方した時、落雷落ちて擱座した瓦礫から、再び虚空回廊を使ってオステローデまで運んできてくれたらしい。
彼女が来てくれなかったら、崩れゆく処刑台の瓦礫と共に運命を共にしていただろう。もし、ゆっくり除斥作業をしていたなら、瓦礫の炎熱にやられるか、酸欠状態で命を落としてしまう所だった。
その後、ブリューヌ内乱の進捗やら、レグニーツァ・ルヴーシュ連合軍の海賊討伐戦やらの戦後処理で、内政の微調整をする為に、ティナが凱の素性を隠して、このオステローデ公宮庭園まで運び込んだという。
確かに、異端を押された以上、ブリューヌに留まることはないし、それを望んだ所で、戻ることはできない。
そこまで、ティナがわざわざここに凱を同道したのは、なぜだろう?
「……もうすぐ15時ですね」
ぼうっと窓を眺めていた凱は、ティナに声をかけられて振り向いた。
「……時計?」
15時というティナの言葉を聞いて、凱は部屋の端を見やった。そこには、独立交易都市で24時間体制の際に導入された際の『世界時計』が、壁面の中心に設置されている。複数の円に独自の役目を果たす3本の『針』が、正確な時間を閲覧者に通告してくれる。霊体による時刻修正起動つきだ。
「これはすごく便利だと思い、つい衝動買いしちゃいました」
まるで失敗談を放すような軽い口調でティナは語った。そういえば、以前『多目的用玉鋼』……凱のいた時代では『GGGスマートフォン』がベースとなっているものを景品で手に入れた際、さらに買い物を続行(ほぼ強行)したんだっけ。
彼女の青い瞳にとって、独立交易都市は未知の宝庫に映ったのだろう。今だジスタートが辿りついていない概念が、この民主制の都市には豊富にある。時計道具。通話道具。馬を必要としない移動車。遠隔映像道具。海を自在にいきわたる船。疫病や血の病の治療法。
何より、貴族や平民、奴隷の区別がない理念が、ティナの感情に憧れを抱かせていた。
そもそも独立交易都市の通貨をどうやって調達したか、気になるところだが……
――……天国ではないと分かったけど、今の俺にとって、やはりここは楽園に近い場所だ――
ふいに、凱の頭にそんなことがよぎった。
ゆっくりと時間が流れる場所。本来なら、このような安らぎの空間に時計などという無粋なものを必要としないはずだ。
その辺は、ヴァレンティナの独特な感性のものだろう
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