第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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交易を続けていた。
「そして……あなたも……また」
だが、信じがたいことを聞かされたという衝撃……すでに凱とガヌロンの関係を知っている事、それに対する衝撃は凱になく、ただ存在のみを求めて『魔物』が『勇者』に下したことに対する嫌悪も窺えなかった。
ただ、ふだんの儚げな表情は影を潜め、彼女は冷徹なまでの視線で、凱の瞳を逃さないように見つめる。
「でも……それでも……あなたは……『あなた』なのですよ」
かつてガヌロンに向けた言葉を、彼女は静かに言い放った。それは、彼女にとって勇者への叱咤激励なのかもしれない。
「……ティナ」
覚束ない凱の呼びかけに、ティナは何も語らない。聴かない。求めない。
今の凱にとって、それさえも辛い。
自分は、自分の『人を超越した力の意味』は同じ過ちを繰り返しているだけではないか?
人を助けることで、人に求められることのぬくもりにしがみついていただけなのか?その為に、いつか誰かを不幸にするのでは……ティッタのように?
俺は、生まれてきちゃ、いけなかったのだろうか?
深い絶望に沈みながらも、凱は懸命に言葉を紡ごうとする。でも……
――もう、誰にもすがってはいけない。誰も傷つけてはならない……なのに――
意思は反発を促していても、心はどうしてもぬくもりを求めてしまう。
慟哭を抑え、鼓動を沈めて、顔を見上げると、ティナは優しく微笑んだ。
「ガイ。あなたには……悲しい『夢』が多すぎます」
「……夢?……俺に?」
ティナはしっかりと、凱を抱きかかえて、慰めるように囁く。
「でも、だからこそ、悩んだり……泣いたり……すがったりしていいのです。違いますか?」
ありがたかった。彼女には、何も隠す必要はない。彼女は独立交易都市で出会った時となに一つ変わらない。勇者でいる必要はない。『人間』である凱を、そのまま受け入れてくれる。
真っ向から、自分の存在を否定されて、成す術もなく漂うしかなかったとしても、彼女の存在は竜具の『虚影』と違い、揺らぐことはない。確かな好意と言葉で、凱を正面きって、その存在を肯定してくれる。
――獅子王凱は、生まれいでた頃のように、赤子の産声を放り投げて泣いた――
◇◇◇◇◇
少し落ち着いてから凱は自分がジスタート王国の『オステローデ』にいることを知った。どうやら自分は何ヶ月も眠っていたらしい。
ナヴァール騎士団とティグル率いる銀の流星軍の交戦。テリトアールの戦い。
ムオジネルによる、ブリューヌ領土の侵略、アニエスへの奴隷確保、オルメア会戦。
ブリューヌの王都で、人知れず……いや、多くの人に知れて、自分は死んだはずだ。なのに――――
先ほどと同じく、腹部の傷に何度も手をやり、混乱した
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