第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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『裂空』の鎌がたたずんでいる。
ヴァレンティナ=グリンカ=エステス。戦姫たる彼女が自分より先に死んでいるとも、思えなかった。
不思議なことに、死を連想する竜具の大鎌とは、すぐに思えなかった。
天使のような彼女と、悪魔のような大鎌の揃う光景は、今の自分にとって、あまりにも矛盾している。
「驚かれました?このような場所で」
ティナ……ヴァレンティナに言われて、自分はようやく広々とした庭のガラス張りの建物にいたのだと気づかされた。
「なんだ……これは?」
ベッドに横たわりながら、凱はあたりを見回して驚いた。
「開放型寝室なんて……驚いたじゃないか」
「だって、ここのほうが、光があふれていて気持ちいいじゃありませんか」
確かに、部屋にこもりっぱなしでは気が滅入る。『影』の戦姫らしからぬ言葉に、凱は不思議な雰囲気を感じていた。
「そっか……そうだよな。ありがとう……ティナ」
そんな細やかな感謝の言葉が、凱の口から自然と出てきた。
「どういたしまして」と、ティナは嬉しそうに返事した。
ティナの装飾衣装の一部である薔薇を見て、なるほど、と凱は思った。
滴るような花の香りに覚えがあったのは、この庭に綺麗な薔薇が咲いているから。そして、彼女がここを気に入っているのは、その薔薇がここでしか咲いていないからと……
どうでもいいような考えをしていた。何かもっと……大切なものがあったはずなのに……まるで、記憶の一部が欠けてしまったような……
「……俺は……」
つぶやくと、ティナが答えた。
「あなたは傷つき倒れ、ここ、オステローデに辿り着いたのです」
その声は穏やかで風のそよぐようであったが、そこに余計な同情は含まれていなかった。
ティナは淡々と、凱に事実を伝える。
「そして、私がここへお連れしました」
「……ガ……ヌ……ロ……ン?」
記憶の欠片が蘇り、凱の心臓が極端に跳ね上がる。
優しい居場所。安らぎの時間。彼女が纏う甘い薔薇の香り。
そうした心地よい羽衣が、一瞬にして色あせる。
「俺は……何で……」
身を突如起こした凱は、突然襲ってきた痛みにあえぐ。
「あ……ああ!!」
俺の存在が……あいつらを……『造った』!!
ぞろりと、背筋から蘇る不気味な感覚に、その思考に、凱の感情は圧迫されて震えだす。
「が……ああ!!」
あの時の台詞が走馬灯となって蘇る。
記憶の中の凱が言う。
――俺は常に『人ならざる者』との戦いに勝利してきた!今更何が出てこようが!――
記憶の中のガヌロンが言う。
――ならば!私の……私たちの『正体』を知ったうえで倒すこともできるのだな!――
欠けた情報を埋める記憶。そ
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