第13話『眠れる獅子の目覚め〜舞い降りた銀閃』?
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『妹』はなお、勇者を口説く。
――時代は、まだあなたを必要としているのよ――
――真実は、すぐそこまで来ているわ――
――だって、貴方は『勇者』だから――
3者の意志は、絶望の淵にいる勇者の勇気を奮い立たせた。
――まだ俺は……『勇者』でいていいのか?俺の存在が、あいつらを造り出して……ティッタを……みんなを……苦しめて……『異物』の俺は、本当に……勇者を名乗っていいのか?『箱庭』の時代に、俺の居場所は……どこにも……――
3者は口を揃えていう。
――理想世界を先導する超越者……アンリミテッド。みんなを、わたしを、わたしたちを、貴方は導いていける――
その女性の声が、凍てついた勇者の心を溶かし出す。かすかな想いが、確かな力として迸り、勇者の瞳から涙があふれる。
頬を伝う涙の熱さが、まだ生きることの権利を、責務を、自由を教えてくれる。
――クーラティオ――
それは、歪んだ呪縛を紐解いていく呪文。
――テネリタース――
それは、悲しい今を、否定してくれる呪文。
――セクティオー――
小さな生命を、取り戻す呪文。
――サルース――
幾度も、幾度も、不幸な人々に恵み与えた奇跡。
――コクトゥーラ――
夜と闇と死を司る自分たちには、似つかわしくない、生命の躍動を伝える呪文。
淡い黒と柔らかい緑の光が、かの魔人に作られた、勇者の腹部の空洞をふさいでいく。
――奇跡は起きた。違う。起こされたのだ――
『ジスタート・オステローデ公宮・とある庭園の一室』
まどろみの中で、獅子王凱は澄んだ声を聞いていた。
ゆるりと目を覚まし、まるでそこは……天国のような風景だった。
その時、凱にはそうとしか思えなかった。時が停止したと思わせる、幻想的な空間。緑の芝生と、色とりどりの花が咲き乱れ、ほんのりと甘い香りが、凱の気管支と鼻孔をくすぐる。そして、青い空を背にして、青みがかった黒髪をさらさらと漂わせた女性が、自分の顔を覗き込んで笑った。
……天使?
「あら。おはようございます」
儚い雰囲気が、光の羽衣を纏っている天使のようだった。
――ああ、そういう事か。――
不思議なぼんやりとした意識の中で、凱はふと思った。
――俺は……やっぱり……死んだのか――
凱は視線を転がして、先ほど天使と思った人に、確かな覚えがあった。
「ティ……ナ?」
青年が名を呼ぶと、女性はふわりと微笑んだ。
「独立交易都市以来でしょうか?お久しぶりですね……シシオウ=ガイ」
どうやら、天国ではないらしい。少なくとも、天使と思えた彼女の傍らに、見覚えのある
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