たとえ毒だとしても
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くジェムを睨んでいたそれから、意識と呼ぶべきものが消えたのがわかった。一瞬、一撃の出来事だった。
「まさか、ダイバ……!?」
「この声は……!」
アルカに心当たりがなく、ジェムのよく知っている声。それは、あの暗くて傲慢な少年の声ではなく。快活なのに、重みのある仙人のような少年の声。
「だめだよ、ジェム。こんな奴らに一瞬でも心を許そうと考えちゃダメ。まあ、その話は後でするとして――君、まだやる?」
背丈で言えば少女のジェムやアルカより小さい子供の姿。だがアルカは一目で彼がただ者ではないことを感じ取った。ふぅ、と息をつきベトベトン他二体をボールに戻す。
「ここは退かせてもらうのです。正直調子が狂って仕方なかったところですから」
「賢明な判断だね。今のところは捕まえるほどのことはしてないし、行っていいよ。僕はこの子に話がある」
「……少しは常識ってものを教えておいてくれると助かるのです」
そう言うとアルカは、ボールからクロバットを呼び出し壊れた天井から飛び去っていった。ジェムとは、意図的に目線を合わせず何も言わなかった。
それを呆気にとられて見ていた後、ジェムは少年の名を呼ぶ。
「ジャック、さん。助けに、来てくれたの?」
「そんなところだね」
ジャックはジェムの師匠であり、昔から面倒を見てくれた人だ。その人がジェムを助けに来てくれたのは嬉しい。でも素直に喜べなかったのは、アルカとちゃんと話せずに終わってしまったからだ。その様子を見て、ジャックは深くため息をついた。
「はあ……あのねジェム。君、今自分がどんな無茶をしたかわかってる?」
「わかってる、つもり……」
自分からあの二人に協力を申し出るなど、危険な行為であることはわかっている。だがジャックが言いたいのはそういうことではなかった。
「あのアルカっていう子は、確かにそんなに悪い子じゃないかもしれない。でも、もう一人の方は本当に危険なのはわかっているだろう?」
「でも、あの子を説得して、2人で話せば――」
「そうなる前に、君がもう一人の方に催眠術をかけられておしまいだよ。何せ彼らの言うことを聞くこと自体は自分から了承してるんだ。あっという間に操り人形になるだろうね。そうなったらあのアルカって子も救われないよ」
突き刺すようなジャックの言葉。う……と言葉に詰まるジェム。
「まったく、君は考えてるようで考えなしなんだから……なまじ母親の頭の良さと危うさを持ち合わせてるだけに不安になるよ。その癖父親のお人よしは完全に遺伝してるし」
「……ごめんなさい」
考えが足りなかったことを認め、謝るジェム。やれやれとジャックは好々爺のような笑みを浮かべて、ジェムの頭を撫でた
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