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フロンティアを駆け抜けて
たとえ毒だとしても
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吐き出すことだけは出来ます」

 戦闘不能になった二体のポケモンが、その口から穢れた毒を吐き出し、アルカのモンスターボールに集まる。まるで今の自分自身の様だとアルカは心の中で自嘲し、叫ぶ。


「粘りと香りで虫を喰らう二輪の恐ろしき花よ!今その毒を混じり合わせ、新たな劇薬を生み出すのです!さあ出てきなさい――ホグウィード!!」


 ホグウィード、と呼ばれたものがモンスターボールから這い出る。その瞬間凄まじい臭気が部屋中を包んだ。出てくる瞬間に猛毒を浴びたそれは、濃紫のヘドロ状の物体で。明確な意思を持っていた。全身がヘドロにしか見えないのに、その中にある二つの目がはっきりとジェムを睨んだのがわかった。

「ベトベトン……!」
「あなたのマリルリの攻撃力は凄いですが、二体の毒で強化したこの子に触ればどんなポケモンも腐り落ちるのです!」

 フェアリータイプ且つ物理攻撃を主体とするマリルリにとっては、相性が悪いを通り越した天敵。ジェムの表情が蒼白になり、うっすら涙が浮かぶ。アルカはそれを絶望と取ったが。

「……ごめんなさい」
「今更謝れば、見逃されると思うのですか?」
「そうじゃないの。私、本当にあなたに悪いことしちゃったんだなって」
「いきなり何を……」
「だって、あなたは約束を守ってくれてた。私が余計なことを言わなかったら、こんなに怒らなかったし、約束も守ってくれたよね」
「うるさいです」
「ごめん、でも――もう一言だけ、言わせて」

 拒絶するアルカ。でもどうしても、ジェムはアルカを放っておけなかった。会って一日もない、まして自分を騙した相手にこう思えるのかは、わからない。

(お父様、お母様。良くないことだとわかっていてこんなことを言う私を、許してくれますか?)

 瞳を閉じて、深呼吸。数秒の後開いた瞳は。誰かを助けたい気持ちと、自分の身が苦境に置かれることを厭わない気持ちが半分ずつになっていた。

「私、あなたに協力する。協力するから……そばにいて、ここを一緒に回って。最初は駒でもいい。私と友達に――」
「――ッ」

 ジェムの告白に、アルカが息を呑む。まさか自分から降参してくるとは思わなかったのだろう。答えはすぐには帰ってこない。答えあぐね、固まるアルカ。
それ故に――突如天井をぶち抜いて落ちてくる“鋼”に、反応が遅れた。


「ぶっぱなしちゃえ、レジスチル!!『ラスターカノン』!」


 アルカとジェムが上を見上げた時には、もう鈍色の光弾が打ち出されていた。それはベトベトンの猛毒の体など全く意に介さず、その軟体を叩き潰し、ヘドロが飛散する。ジェムの方にも飛んできたが、全て“鋼”そのものというべきポケモンが受け止めた。さっきまで強
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