たとえ毒だとしても
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寄り手を伸ばす。それは恐らく過去に罪を犯し続けたであろう少女への救いの手。
アルカは、その手を見て、笑って、手を伸ばして。否、指を差して。
「――『蔓の鞭』」
平手打ちのような音が響いた。マスキッパの蔓が、ジェムの伸ばした手を叩いた音だった。それははっきりと、アルカにの拒絶と、憤りを現していた。
「あなたに何がわかるんですか。ぬくぬくと両親の元で光を浴びて、綺麗に育てられたあなたに何が!」
笑みが、激昂に切り替わる。ジェムと会話していると、今までは何とも思わなかった自分の過去が惨めに思えて仕方なかった。
「周りにある食べものはナゾノクサの葉っぱやマダツボミの根のような毒草しかない状況に立たされたことはあるのです?物乞いをするたびに変態に体をベタベタ触られる辱めを受けたことは?やっと現れた自分を保護してくれた人が、都合のいい操り人形が欲しかっただけだった時の絶望を感じたことは?そんなこと、どうせ想像したこともないくせに勝手なことを言わないでほしいです!」
「……ッ」
叩かれて真っ赤になる手を抑えながらも、ジェムはアルカから目を反らさない。確かにジェムはそんな状況見たことも聞いたこと考えたこともない。だけど、彼女を切って捨てたくはない。アルカの過去の片鱗を聞いて、強くそう思った。
「もういいです。あなたは私達の駒、それが終われば物言わぬ人形でいいのです!やりなさい、『パワーウィップ』!」
「ルリ、避けて!」
マスキッパとウツボットが、今までより遥かに強く鞭を振るう。躱したマリルリのいた場所に振り下ろされた鞭が床をひび割れさせた。
「そんなの、わからないけど……でも、あなただってやりたくてやったわけじゃ」
「余計なことは言わなくていいです!ペンテス、『リーフブレード』!ティオ『怒りの粉』!」
ウツボットの刃と化した葉がマリルリに迫るが、今度は水の噴射で躱す。アルカの攻撃は単調且つポケモンのレベルで言えばジェムの方が勝っているので、避けるのは難しくなかった。――が、マスキッパが部屋中にまき散らした花粉は避けようがない。マリルリもジェムも、花粉を吸いこんでしまう。
「こほっ……ルリ、大丈夫?」
「――――リルゥ!!」
「ルリ!まだだよ!」
マリルリが、ジェムの指示なしにマスキッパに突撃する。だがそれは、『パワーウィップ』や『リーフブレード』を避けたマリルリではない。カメレオンのように自分の色を溶け込ませていたもう一匹のマリルリが姿を現し、粉を巻くマスキッパに一撃を叩きこむ。
「はっ、なるほど……『みがわり』で自分が存在するように見せかけ、本体は『ほごしょく』で周りに溶け込んで隙が出来たら攻撃ですか。大した戦略なのです――だけどもうタ
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