たとえ毒だとしても
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ない。目の前の獲物を縛り上げていると勘違いしているマスキッパに巨大な水の塊が落ちる。
「キパァァァァ!?」
(いつの間にわたしのポケモンから逃れて!?この部屋に隠れるほどのスペースはない。一体いつからそこに……!)
「ウツボットに、『滝登り』!!」
床に叩きつけられるマスキッパに驚く間に、マリルリはウツボットの下から潜り込み、尾から思い切り地面に水を噴射することで強烈なアッパーを見舞う。ウツボットと、彼女の頭に乗っていたボールが吹き飛んで、ジェムの方に転がってくる。すぐさま掻き集めるように拾い、安堵の笑みを浮かべるジェム。
「皆、お帰り!」
「やられましたね。しかし……」
歯噛みするアルカだがどこか困惑した表情を見せている。今の一連の流れには、解せない部分があった。
「何故私を狙わなかったのです?どうやって姿を消していたかはわかりませんが、マリルリは確かに私の横にいた。その力で私を殴り飛ばすなり、近づいてポケモンを返さなかったら殺すと脅せば良かったのでは?」
「……そうしようかとも思ったよ。だけど」
ジェムはまっすぐアルカを見据える宝石のような瞳は、アルカのことを敵とわかっていても、嫌悪してはいない。
「ルリが攻撃を避ける間、あなたは私を攻撃しようとはしなかったよね。言うことを聞かせたいだけなら、私を狙うそぶりを見せてルリの行動をけん制したほうが確実だったはずだよ。でもあなたはそうしなかった。だから私も、あなたのことは狙わない」
「……変な人ですね。負けたらあなたは悪人の片棒を担がされるんですよ?」
ジェムの真意を伺うアルカ。アルカがジェムの立場なら、相手にどんなことをしてでもここから逃げ出そうとするだろう。
「そうかもしれないけど……私、あなたが本当に悪い人なのかなって思うの」
「意味がわからないのです」
ジェムから遠ざかると共に明確な拒絶。それに構わず、ジェムはこう続けた。
「そもそも悪い人なら。自分たちの目的のためにあのアマノという人にもう一度私をおかしくさせればバトルすらしなくてもいいよね。だから」
希望的観測であるとしても、さっきアルカが自分を玩具の人形を見るような目を向けていたとしても。ジェムは少女と少年を救った人の娘としてこう言いたかった。
「あなたは本当はこんなことなんてしたくないはず……違う?」
アルカは黙った。自分の手を、ポケモン達を見つめてジェムを見ないようにする。自分には、彼女は眩しすぎる。
「アマノっていう人だって、あなたを拾って育ててくれたんだから本当に悪い人じゃないはず。だからもう、こんなことやめよう?私も一緒に、説得するから……」
ジェムはアルカに歩み
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