暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八話 傀儡
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
愚か者どもが彼を自治領主にと騒ぎかねぬ」

「なるほど、確かにそうですな。いや、伯の御好意には感謝いたします」
オリベイラ弁務官が笑みを浮かべた。ペイワードも安心したような表情をしている。競争相手が減ったとでも思ったか……。

「そのボルテック弁務官ですが一人補佐官をフェザーンより送って欲しいと言っております。確かケッセルリンクと言いましたかな、若い補佐官です。仕事が忙しいので助けて欲しいと」
「……そうですか」

「私からこのような事を聞くなど不愉快でしょうがルビンスキーが失踪して以来、誰に相談してよいか分からなかったようです。如何でしょうな」
私の問いかけにペイワードはオリベイラ弁務官を見た。その視線を受けてオリベイラ弁務官が微かに頷く。

「分かりました。彼をボルテック弁務官の下に送りましょう」
ペイワードの答えにオリベイラ弁務官が満足そうな表情を見せた。自分の思い通りに動かす事が出来る事が嬉しいらしい。

オリベイラは自分の意のままに動く傀儡を自治領主にしたつもりだろう。そしてフェザーンを同盟のために利用しようと考えているのだろうが、ペイワードにも感情がある。度が過ぎればいずれはペイワード自身がオリベイラを疎んじるようになる。ペイワードが何時我慢できなくなるか、半年、或いは一年か……。まあそれまではせいぜいフェザーンの支配者を楽しむ事だ、オリベイラ弁務官殿……。


帝国高等弁務官府に戻ると一時間も経たないうちに面会を求めてきたものが居た。ルパート・ケッセルリンク、端正な顔立ちの青年だが表情が少々暗い。

「ルパート・ケッセルリンクです。この度、オーディンの高等弁務官事務所に赴任する事になりました。ボルテック弁務官からの要請と聞きましたが、私に何をさせたいのでしょう? ご存知でしたらお教えください。こちらにも準備が有ります」

「ペイワードにこちらを探って来いとでも言われたか、御苦労だな」
「……そのような事は」
「ボルテック弁務官は関係ない。卿を必要としているのは帝国だ」

私の答えにケッセルリンクは表情を強張らせた。
「……それは、どういう意味でしょう」
「答える必要があるかな」

「……」
「……」
「……いえ、有りません」
「結構」
表情は青褪めているがそれなりに肝は有るか。

「父親からの連絡は有るか? それとも居所を知っているかな?」
ケッセルリンクは黙ったまま首を横に振った。
「信用されてはおらぬか」
「……」
私の言葉にケッセルリンクの表情が歪む。

「卿はオーディンに着いたらボルテックの元に行け。そして帝国が卿を送ったと言うのだ」
「ボルテック弁務官は私の事を……」
「知っている」
また表情が歪んだ。

「私の役目は?」
「とりあえずはボル
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ