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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八話 傀儡
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或いは既に身柄を確保しましたかな?」
「いえ、残念ですがまだ彼の行方は分かりません」
オリベイラ弁務官の表情が歪んだ。

ルビンスキーの捕縛は帝国が同盟にフェザーン進駐を認めた条件の一つだ。オリベイラは着任早々ルビンスキーに失踪されることで失点を付けた。
「なるほど、困った事ですな」

「実はルビンスキーが失踪してから今日までフェザーンの自治領主は不在です。何時までも空席にしておくわけにもいかないと思うのですが、伯は如何お考えですかな」

やはり、それか……。先日から目の前の男が同盟に好意的な人物で自治領主になってもおかしくない人物を探していると部下から報告があったがどうやら相応しい人物が見つかったようだ。

ルビンスキー失踪でおそらくは同盟本国からも叱責でもされたのだろう。自治領主に同盟の言う事を聞く人間を付けて失点の挽回と言う事か。では話を合わせてやるか。

「確かにそうですな。しかしどなたか良い人物がおりますかな?」
「ええ、幸いにも。その事で伯の、帝国の了承を得たいと思いましてな」
そう言うとオリベイラ弁務官は出口に向かいドアを開けると“入ってくれ”と声を出した。

部屋に入ってきたのは五十代後半の男だった。
「マルティン・ペイワード氏です。先代の自治領主、ワレンコフ氏の下で補佐官を務めていました。ルビンスキーが自治領主になった時に彼に合わないものを感じ補佐官を辞めました」

オリベイラ弁務官の紹介が終わるとペイワードは緊張した面持ちで名乗った。
「マルティン・ペイワードです」
「如何でしょうかな、レムシャイド伯。御了承願えましょうか」
幾分緊張気味にオリベイラ弁務官が問いかけてきた。ペイワードも同様だ。傀儡でも自治領主になりたいか、愚かな。

「ふむ。ペイワード氏が帝国に対して不利益を働く事が無ければ帝国としては反対する理由は有りませぬな」
「もちろんです。私はルビンスキー前自治領主とは違います。信じていただきたい」

「ならば帝国としては異存有りません。しかし長老会議がペイワード氏を自治領主として認めますかな?」
「問題ありますまい。帝国と同盟が支持しているのです」

オリベイラ弁務官が事も無げに言ってのけた。勝者の余裕、いや傲慢か。喜びを露わにしているペイワードと満足そうなオリベイラ弁務官を見ながら思った。傲慢は時として馬鹿と同義語になる、分かっているのかこの男……。

「ところで帝国駐在のボルテック高等弁務官ですが留任と言う事でよろしいですかな」
「……」
私の言葉にオリベイラ弁務官とペイワードが顔を見合わせた。二人とも表情が厳しい、やはりボルテックの事を気にしていたようだ。

「彼はオーディンに居る方がそちらにとっても好都合かと思われるが如何かな。下手にこちらに戻すと
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