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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八話 傀儡
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、あれで化けましたな』
「あれか」

スクリーンの中でエーレンベルクが頷くのが見えた。あの一件は私とエーレンベルクでヴァレンシュタインにオーディンの治安を任せた。ヴァレンシュタインは見事に内乱を防いだが化けたとはどういうことか?

「化けたとは?」
『オーディンが、帝国が内乱に突入しなかったのはヴァレンシュタインの力量によるものでした。誰もが彼を事に及んでは断固たる決断が出来る人物だと認識した、大きな決断が下せる人間だと認識したのです。そして大きな決断を下せる人間こそが大軍を指揮統率できる……』

エーレンベルクが口を噤むと今度はシュタインホフが代わって話し始めた。
『そして第三次ティアマト会戦、あの戦いでヴァレンシュタインは全軍の危機を防ぎました。にもかかわらず本人は軍規違反の責任を取って軍を辞めようとした。将兵にとって彼以上に信頼できる人物はいなくなったのです』

「なるほどの」
ヴァレンシュタインの持つ何かとは、“威”でもなく“華”でもなく“信頼”か。
『不思議ではありますが、将兵は艦隊司令官の経験の無い彼を誰よりも信頼しました。そしてシャンタウ星域の会戦での大勝利、将兵にとってヴァレンシュタイン以上に宇宙艦隊司令長官に相応しい人物は居ません』

「では今しばらくはヴァレンシュタインに宇宙艦隊司令長官を委ねるしかないの」
『少なくともあと三年はヴァレンシュタインが司令長官の職に有るべきだと私もシュタインホフ元帥も考えています』

あと三年、つまり自由惑星同盟を征服するまでか。その後なら、平時ならメルカッツでも問題ないということか。苦労をかけるの、ヴァレンシュタイン。なんとかその苦労を軽くしてやりたいとは思うが、はてどうしたものか……。


帝国暦 488年  2月 15日  フェザーン 自治領主府 ヨッフェン・フォン・レムシャイド  


「これはレムシャイド伯、お忙しい中御足労をおかけします」
「いやいや、気になされますな。して何か有りましたかな、オリベイラ弁務官。わざわざ自治領主府に呼ばれるとは」

部屋に入ると執務机に座っていたオリベイラ弁務官は席を立ち私の方に歩いて来た。顔には満面の笑みがある、但し目は笑っていない、油断できない男だ。

意識して笑みを浮かべながら目の前の新任のオリベイラ高等弁務官を見た。元は学者だということだが、どうみてもそうは見えない。自信と優越感に溢れた官僚に見える。まあフェザーンを占領したのだ、自信に満ち溢れているのも無理は無い。

その証拠がこの部屋だろう。自治領主の執務室、フェザーン占領以来ルビンスキーの捜索を口実に此処で執務を取っている。フェザーンの統治者は自分だと周囲に示したいらしい。笑止な事だ。

「もしかするとルビンスキーの居所が知れましたか、
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