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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八話 傀儡
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いっそ内務尚書にでもするか、あれは軍人よりも政治家の方が向いておろう。
『それも一案では有りますが、後任が……』
「悩む事はあるまい、シュタインホフ元帥。メルカッツがおろう、あれに任せてはどうじゃ」
私の言葉にシュタインホフは困惑したような表情を見せた。エーレンベルクも同じような表情をしている。
「メルカッツではいかぬかの」
『メルカッツ上級大将が無能とは言いません。ヴァレンシュタインの後は彼しかいないのも事実ではありますが……』
シュタインホフの口調は歯切れが悪い。奥歯に物が挟まったような口調だ。
「妙な言い様じゃの。何か不満があるか」
私の言葉に今度はエーレンベルクが話を続けた。
『宇宙艦隊司令長官という役職は少々特殊なのです。兵を鼓舞し、喜んで死地に赴かせる何か、威というか華というか、能力以外の何かが要ります。メルカッツには能力は有りますが、その何かが不足していると思えるのです』
「……」
『メルカッツを責める事は出来ません。宇宙艦隊司令長官とはそれほど難しい職なのです。能力だけで務める事は出来ない』
「卿らでも難しいか」
『私もシュタインホフ元帥も艦隊を率い戦場に出て武勲を挙げました。決して無能ではなかったと思います。しかし宇宙艦隊司令長官にはならなかった、いやなれなかった。メルカッツ同様、いや彼以上に能力以外の何かが私達には無かったと当時の軍上層部は判断したのでしょう』
「なるほど、ミュッケンベルガーにはそれが有ったか……」
私の言葉にスクリーンの二人が頷いた。
『ミュッケンベルガー元帥は若い頃から独特の雰囲気を持っていました。誰もが彼の前では身を正したくなるような威厳。そしてそれは年を経るに従って強くなりました。そういう何かが宇宙艦隊司令長官には必要なのです』
“威”、“華”、エーレンベルクの言う事は分からぬでもない。ミュッケンベルガーもあの小僧、ローエングラム伯もどこにいても周囲の目を集めた。ミュッケンベルガーには“威”が、あの小僧には“華”が……。
エーレンベルクがローエングラム伯の名を出さずとも分かる。じゃがヴァレンシュタインにもそれが有るのか? その辺りがどうもよく分からぬ……。あれは目立つ事を好まぬし、“威”や“華”などあるようには見えぬが。
「ヴァレンシュタインにもそれが有るか」
私の問いにエーレンベルクはまた困惑したような表情を見せた。
『彼は少し違うような気がします』
「……と言うと?」
『私は彼が未だ尉官の頃から知っています。彼が有能な軍官僚、参謀には成るかとは思いましたが宇宙艦隊司令長官になるとは思いませんでした』
「ふむ」
私が頷くとシュタインホフも同意するかのように頷いた。
『ですが例の事件、陛下が御倒れに成ったときですが
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