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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
54.劣勢の最中
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だ嫌な予感がする。
言葉にすることはできないが、あの少年はまだ何かを隠している。
あの眷獣以上の凶悪な悪意を……
「まだ俺を楽しませてくれるよなァ?」
こちらを嘲笑うかのような笑みを浮かべる金髪の少年。緋色の瞳がより一層赤みがかっているように見える。
足が震えだす。今まで抑え込まれていた恐怖が一気に押し寄せてくる。
今すぐにでも逃げ出してしまいたい。
「……柚木ちゃん。こっち向かずにそのまま聞いて」
すると震える柚木の耳が消え入りそうなほど小さな美鈴の声を捉えた。
「……このまま戦いが続いても勝ち目はないわ」
今まではただ柚木の想像の範疇でしかなかった。しかし美鈴の言葉によってそれは現実のものとなった。
「だから少し無謀かもしれないけど……」
美鈴の言葉が紡がれていく。
まるで時が止まっていたかのように静かな空間に美鈴の言葉だけが響いてくる。
「それって……」
あまりにも無謀すぎる作戦に柚木は反論しようとする。しかし否定することは今の柚木にはできなかった。それ以外にこの状況を打開する策など思いつかない。
しかしそれは一手でもミスを犯せば、わずかでも予想外のことが起きれば美鈴は……
「私なら大丈夫よ」
いつものような優しい笑顔を見せる。
美鈴がこれだけ捨て身の覚悟で戦おうとしている。それに答えずに逃げ出すことも否定することも今の柚木にはできない。
ならば、やらなければいけないことは決まっている。
───『やらずに後悔するよりもやって後悔したほうがいい』
そんな言葉が脳裏をよぎった。
しかしそれではダメなんだ。やって後悔しては意味がない。
だから、『やって後悔しない』ように何があっても柚木はこの作戦を成功させなければならない。
覚悟を決めて柚木は大きく頷いた。
美鈴はそれに応えるように再び優しい笑顔を見せた。
「作戦会議の方は終わったかァ?」
待ちくたびれたと言わんばかりに大きな欠伸をしている金髪の少年。
「ええ、待たせちゃって悪かったわね。お詫びに楽にしたあげるわ」
「はっ! やれもんならやってみろ」
不気味に笑みを浮かべる。
指の骨が鳴る乾いた音が空気を震わせた。
それとともに再び、蛇を操る強大な悪意が姿を現した。
「それじゃあ、頼んだわよ、柚木ちゃん!」
「はい! 美鈴さんも気をつけてください!」
これが全てを決める最後の戦い。
失敗など許されない。
自分たちのために時間を繋いでくれたアレイストや海原のためにも、ボロボロになっても戦い続けてくれた美鈴のためにも、この街に暮らす人々のためにも、そして何も知らないくせに首を突っ込んで来て、何の力も
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