暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
54.劣勢の最中
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血の獅子が出現する。

「柚木ちゃん!」

「はい! ──光臨して、“真実を語る梟(アテーネ・オウル)”!」

 出現した光の塊は、黄金の翼の梟へと姿を変える。

「そんな眷獣でアレスを止められると思ってんのかァ!」

 確かに全ての次元に干渉し、その四肢が触れている全てを破壊し尽くす次元喰い(ディメンジョン・イーター)を持つ破壊の化身を前に“真実を語る梟(アテーネ・オウル)”ができることは少ないかもしれない。それでも相手が同じ眷獣ならば、魔力の塊だというならば魔力を無へと還す黄金の翼に触れれば消滅こそできないかもしれない。しかし触れれば相手もただではすまない。

「いいえ、止められるわね」

 黄金の梟に並走するように新たな光源が出現する。それは太陽のごとき輝きを放つ狗へと姿を変化させていく。

「“神光の狗(アポロ・ガン)”──ッ!」

 美鈴の叫びに太陽の狗が吠え、自らの輝きをより一層際立たせていく。まるで太陽がこの場にあるような錯覚さえも覚えさせるほどに眩しい。単なる目眩しと言ってしまえばそれで終わりだが、わずかな隙が作られるだけでもこの戦況を覆すことはできる。

「行きなさい、柚木ちゃん!」

「貫け、“真実を語る梟(アテーネ・オウル)”!」

 黄金の翼が鮮血の獅子の胴をとらえた。その瞬間、翼に宿る魔力無力化の力が鮮血の獅子へと襲いかかる。
 最後の悪あがきと言わんばかりに獅子が咆哮する。いや、それは咆哮というよりも自らの死の危機を感じた獣の絶叫そのものだ。
 獅子の咆哮は大気を揺らし、衝撃波となって一体を飲み込んでいく。
 “戦火の獅子(アレス・レグルス)”が最も得意とする無差別破壊攻撃。いかなる次元にも干渉し、防御魔術や加護さえも一瞬で無へと還す。
 このままでは鮮血の獅子によって辺り一面が更地へと変えられてしまう。なんかとしなければならない。

「お願い、アテーネ──ッ!!」

 柚木の叫びに応えるように黄金の翼が光を増幅させていく。増幅された光は空気中を粒子となって漂い鮮血の獅子へと覆っていく。
 全てを無へと還す破壊の咆哮と全てを無へと戻す無力化の光のぶつかり合い。
 二体の眷獣の全力の戦い。どちらかが少しでも手を抜けば、その瞬間に押し負けるであろう均衡した状態。
 しかし、均衡状態は長く続くことはなかった。
 先ほど無力化の翼を受けたことでかなりのダメージを受けていた鮮血の獅子の咆哮は徐々に弱まっていく。そして無力化の光に包まれて消滅した。

「……ごめんね」

 消えていく眷獣へと向けられた言葉。
 眷獣に罪がないとまでは言い切れない。けれど彼らだって破壊を望んでいるわけではないような気がする。
 “真実を語る梟(アテーネ・オウル)”が
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