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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
54.劣勢の最中
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を少し前に突き出す。
神々の名を冠す眷獣たちにさえ抗う夢幻龍ならこの偽りの世界を壊せるかもしれない。
「ボクから離れないで彩斗君。多分、大規模な結界だと思うから現実に戻った時に何が起きるかわからないからさ」
彼女はわずかに彩斗の体を引き寄せる。
しかし、彩斗にはわかっていた。友妃がどれだけの魔力を費やしてもこの世界を壊すまでには至らない。
触れただけで魔力を無へと還す“夢幻”の刃であろうとも実体のないものへは触れることはできない。彼女が今やろうとしていることは霧や雲を切るのとほとんど変わりない。
「待ってくれ」
「どうしたの彩斗君?」
「多分、今のままじゃダメだ。もう少しだけ待ってくれ」
そんな曖昧な答えしか出すことができなかった。
どうすればいいんだ。考えろ、考えるんだ。
立ち止まっている間にも柚木や美鈴があいつに殺られているかもしれない。
頭がパンクしそうだ。どうしたって俺では無理だ。
───今の俺では……
その言葉をきっかけに彩斗の中に何かが駆け巡る。それは誰かの記憶であり、誰かの経験であり、誰かの感情であり、誰かの痛みだった。
そのどれもが彩斗とは無関係のものばかりだった。しかし、そのどれもが無関係とは言いがたいほどに鮮明に思い出す。
知りもしない記憶を思い出すというのもいささか気分が悪い。
「……そうか」
その感覚を彩斗は知っていた。自分にはないものを思い出す奇妙な感覚。これまで何度もその感覚に導かれてきた。その結果がこんな状況を生み出しているというわけでもある。
どれもがいままでの経験からするとありえないことだらけだったがそのどれもが彩斗を確かな方向へと向かわせている。それが果たして正しい道なのかはわからない。
この記憶も経験も感情も痛みも全てが彩斗に何かを気づかせようとしている。
今まではただ教えてくれただけだった。しかし今回のはどこか違う。
記憶の扉が次々と開いていく。
───枯れ果てた大地の上で一人倒れる青年。
───そこに歩み寄ってくる着物姿の女性。
───
彼
(
オレ
)
はその女性に助けられた。
───化け物だと言われた。
───化け物じゃないと優しい声で言われた。
───
彼
(
オレ
)
は決めた。
───何があろうと君を守ると……
───そして君は
彼
(
オレ
)
の……
───無数の死だった。
───そこに一人立っていたのは……
化け物
(
オレ
)
だった。
───そして、君は……
「……そうだったのか」
彩斗が全てを悟った時、記憶の再上映は不意に終わった。彩斗とは関係のない記憶。
誰の記憶なのかはわからない。しかし、これが今の彩斗が何者なのかを知るに
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