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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
54.劣勢の最中
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一気に襲ってくる。しかしそのどれもが彩斗の足を止める理由にはならなかった。
一分でも、一秒でも早く駆けつけなくてはいけない。それが自分のエゴだということはわかっている。行っても何もできずに足手まといになるということだってわかっている。
しかし、それでも彩斗は柚木を守りたい。彼女のそばにいて少しでも力になりたい。
「ちょっと待って彩斗君」
後方を走っていた少女の声に足を止めた。
「どうしたんだ、友妃?」
辺りを見渡しながら友妃はわずかな疑問を口にした。
「はっきりとは言えないんだけど何かがおかしい気がする」
その言葉に彩斗も辺りを見渡す。
崩壊している建物。隆起した地面。なぎ倒されている電柱などこれまでの戦いの深刻さが一目見ただけでも分かる。
普段の光景からするとおかしなことだらけだ。
しかし、それでもそれ以上に何かがおかしい。だが、言葉にすることはできない。それはどこかに異変があるということだけを認知させている。
「音が……消えた?」
友妃の言葉が今まで感じていた違和感を一気に形作っていく。
焦る感情が邪魔をして違和感に気付くのが遅れた。
今までと明らかな違い。先ほどまであれだけ鳴り響いていた轟音も、肌を刺すような魔力も何も感じない。“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”たちの戦いなど最初から行われていなかったとでも言うようにだ。
「これは……」
この現象の正体を彩斗は知っていた。体験したわけでも経験したわけでもないが知っている。
またしてもこの感覚だ。知らないはずのことを知っている不可思議な感覚。しかし今はそれを言葉にして、友妃に対処法を聞くのが打開策だろう。
「……夢幻の世界」
「夢幻の世界?」
友妃が首を傾げた。
この世界に気づいて率直な感想がそれだった。
夢と幻が作り出した偽りの世界。
彩斗は直感的にわかった。ここにいれば安全なのだと。元の世界からは一部だけ切り離された空間。外からの干渉を拒み、内からの干渉さえも拒む夢幻の牢獄。
こんなことができる……いや、こんなことを行う人物など一人しかいない。
「母さんか……」
彩斗たちをこれ以上巻き込まないためにこの夢幻の世界に閉じ込めた。そう考えればつじつまがあう。
この世界にいる限り彩斗も友妃も何もできない。このまま祭典が終わるのをここで待っていろということなのだろう。
だが、そんな気なんて毛頭ない。
この世界を打ち破る方法がないわけではないはずだ。
ない頭をフルで使って考えろ。
元より彩斗に魔術や魔族の知識などはない。だが、それでも考えるんだ。
「彩斗君、もしかしたら“夢幻龍”ならこの世界を壊せるかもしれないよ」
友妃が自らの刀
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