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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
54.劣勢の最中
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ずだ。それなのに相手の攻撃の手は一向に緩まる気配すらない。いくら相手が化け物だからといって魔力は有限。
“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”に選ばれし者達が個々に膨大な魔力を手に入れる。それは真祖たちに比べれば劣るが
長老
(
ワイズマン
)
たちに比べれば遥かに勝る。
その条件は金髪の吸血鬼とて変わらないはずだ。しかし、彼の魔力量は真祖に匹敵するのかと錯覚させるほどに異常に感じる。
「そうね。でも、もうその必要は無くなったわ」
不敵な笑みを浮かべる美鈴。
「あァ?」
すると目の前にいたはずの美鈴の体がみるみるうちに不鮮明になっていく。
霧化だ。吸血鬼が行える一種の防御法のようなもの。質量をなくし、一時的に一切の攻撃を通さなくなる。質量を持たぬ者は、存在しないの同じ。
通常なら触れることのできない絶対の防御であるが今回は霧化が意味がないということは今までの戦いで明確だ。“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”同士の戦いにおいて霧化はただの目くらましにしかならない。
「んなもんで逃げたつもりかァ? 狩りとれ、“
黒妖犬
(
ブラックハウンド
)
”!」
その叫びとともに漆黒の獣が異世界から召喚される。
異世界の獣のけたたましい咆哮は衝撃波を生み出して辺りの建物を破壊していく。凄まじい衝撃に吹き飛ばされないように必死でその場に耐えようとする。
すると漆黒の獣は凄まじい勢いでこちらへと突進。それに気付いた時にはもう遅かった。
霧になりかかっていた美鈴の体を漆黒の獣の顎がとらえていた。
消えかかっていた美鈴の体は再び実態を取り戻し、上半身だけを残してこの世界から姿を消した。宙を舞って落下していく体に柚木は呆然と見ることしかできなかった。
「う……そ……」
ベチャ、という不快な音とともに地面に無造作に叩きつけられる。
それでも大丈夫。美鈴は不死身の吸血鬼だから仮に死んだとしても生き返ることができる。しかし、相手は“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”の眷獣。不老不死であろうと関係なく消し去る神の呪いを受けし神々の力。
つまりそれが意味するのは……
「大丈夫よ、柚木ちゃん」
後方から聞こえた穏やかな女性の声に振り返る。
そこには何食わぬ顔をした美鈴が立っていた。
「美鈴さん」
安堵感から力が抜けそうになるのを必死で堪える。
「確実に“
黒妖犬
(
ブラックハウンド
)
”がとらえたはずなんだけどなァ? ……何をしやがった」
憎々しげというよりは歓喜するような表情で金髪の吸血鬼は美鈴を睨みつける。
「教えるとでも思ってるの? 足りない頭でよく考えてみな。それにこれで私も全力を出せるんだからね」
不敵な笑みを浮かべた美鈴がわずかに視線を落とした。ちょうど美鈴の足
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