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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七話 幕間狂言
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との声が大勢を占めるようになる。内乱も同様だ、長引けばそれに付け込めという意見が大きくなる。そうだろうレベロ、ホアン」

トリューニヒトの言葉に渋々ながら頷いた。ホアンも頷いている。
「帝国には内乱を早期に終結してもらう。それによって出兵論、フェザーン占領論を押さえつけるしかない」
「……」

「そして捕虜交換を実施する。帝国との友好を強調しつつフェザーンを早期に返還する手段を考えるんだ」
その通りだ。だからこそ敢えて帝国領出兵というカードを帝国に対して見せた。

切ったのではない、見せたのだ。切られたくなければ早期に内乱を終結しろ、と言う事だ。そのために敢えて同盟内で出兵論を皆に分からぬように煽る事もした。妙な噂が流れている事も幸いした。

軍も内乱の早期終結に関しては同意している。彼らにとってイゼルローン、フェザーン両回廊からの攻勢は悪夢でしかない。
「元帥が本当に重態だったらどうする。内乱の早期解決は難しいかもしれんぞ」

「その時は本当に出兵と言うのも有るだろうな」
「馬鹿な、冗談ではないぞ、トリューニヒト!」
私が大声を上げるとトリューニヒトは肩を竦めた。

「可能性の問題だよ、レベロ。捕虜交換が望ましいのが事実だが、帝国が混乱してくれるのが望ましいのも事実だ。内乱が長期化すれば、それをきっかけに帝国がこちらとの和平を考えると言う可能性もある。いかにして同盟を再建するか、帝国を無害化するか、それが問題だと私は思っている」
「……まあ、分からないでもないが」

執務室に沈黙が落ちた。トリューニヒトの考えは分からんでもない。だが帝国領出兵はかなり危険な選択肢だろう。出来る事なら避けたい選択肢だ。それに軍がどう思うか、かなり強い反対をするのではないだろうか。軍上層部は戦力回復を優先するべきだと考えている。すり減らすような出兵には強く反対するはずだ。

同じ事を考えていたのだろう。今度はホアンがトリューニヒトに問い始めた。
「出兵の事は軍には話したのか?」
「グリーンヒル総参謀長には話した。いや向こうから訊いてきた。出兵論がこれ以上強くなったらどうするかと」

「それで」
「正直に話して軍でも検討してみてくれと言ったよ。彼は難しい顔をしていたが承諾してくれた。検討の余地は有るということだろう」
「そうか……」
ホアンが私を見たが頷く事も首を振る事も出来なかった。ただ溜息が出た。

「フェザーンの一件では帝国にしてやられた。しかし今度はこちらが仕掛ける番だ。帝国にも少しは冷や汗をかいて貰おう」
軍がどう思うかだな、トリューニヒトの声を聞きながら思った。特にイゼルローンのヤン提督がどう思うか、無性に彼と話がしたくなった。




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