第19夜 詭弁
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いう事になる。
この説は、『欠落者』の性質によって理解できるかできないかが二分され、理解できる側に属する存在は諜報・捜査機関である『追走する豹』の適正が高いらしい。
というのも、この説はアルバートが当時人口を2分するほどに増えていた『無欠者』をひたすら観察して立てた説であり、逆を言えばこれはアルバートが『無欠者』の心理を理解できる珍しいタイプの『欠落者』だったことを意味している。そして『追走する豹』は『欠落者』、『無欠者』を問わず危険因子や潜在的配信者を調査・追跡する存在であるために一定の感情に対する理解力が必要になるため、必然的にこの説に納得できる人間でなければ『追走する豹』には適さないという理屈だ。
さて、その理屈に則るならばギルティーネ・ドーラットという少女は人間が人間を判断する基準の一部が欠落しているということになる。或いは言葉を省き、すべてが外見的特徴で判断されると言った方が正しいのだろうか。学者ならぬトレックには判別のつく話ではない。
トレックには、未だにギルティーネという女の人物像が把握できていない。
もしかすると、彼女が言葉を発しない限りは永遠に不可能なのかもしれない。
だが、それでも共に行動していた間に垣間見えたほんの僅かな人間味が、頭にこびり付いて離れない。
彼女が何を考え何を望むのかはトレックには分からない。
ただ、彼女にとってはあそこにいるより外に出ていた方が都合が良い筈だ。その方が、あの教導師が口にしていた「あのお方から与えられた機会」を有効に利用することが出来る。彼女を連れて何をするかまでは朧げにしか決めていないが、彼女を連れることによるメリットはある。……美女を侍らせることが出来る、などという俗なメリットではない。断じて。
結局、彼女は誰かの都合で動かされている。
トレック自身も恐らくそうなのだろう。
だからこそ、その誰かの都合の中で出来ることを探さなければならない。
トレックはもう一度、『断罪の鷹』の護送車の檻の鍵を開けた。
外の陽光が嘘のように闇に塗りつぶされた空間に光の道が通り、その道が再び鎖に繋がれたギルティーネ・ドーラットを照らす。突然の光を感じ取ったギルティーネの重苦しい鉄仮面が微かに上を向いた。
第一印象と第二印象は全く違うな、とトレックは思った。
最初はこの拘束衣に包まれた鉄仮面の犯罪者の得体がしれず、恐怖ばかりが先行していた。
しかし今はそうではない。この鉄仮面に無理やり髪を押し込められた一人の少女がいることを、トレックは知っている。矢張りアルバートの説は時と場合によっては当て嵌らないものだな、と内心で小さく笑いながら、今度は淀みなく彼女の拘束を一つ一つ外していく。
鉄仮面を外すと、昨日あれだけ梳いたのにまたくし
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