第19夜 詭弁
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ことは知っているだろうが、俺が矜持に拘るかどうかは知らないだろう。
だから自信満々に、厚顔無恥に、傲慢不遜にそうだとはっきり言いきってしまえばいい。
一般人ならばこの発言は鼻につくだろうが、俺が散々相手にしてきた『欠落者』ならば――。
「呪法師の矜持と来たか……理解できない話ではない。名門連中やエリート気取りの学者共は特にな」
(ほぅら、通じた……!)
息をするかのように無償の善言を吐く人間は胡散臭いから疑われるが、私利私欲を隠しもしない発言は嫌われこそすれ疑われることはまずない。善言は耳に心地よすぎるから裏を探ってしまうが、悪言はその内容こそが裏そのものだ。だからこそ疑われにくい。
「しかし、それがドーラット準法師である必要性はないな。それこそ君と共に行動していたメリオライトという女を代役にすればいいではないか」
「ステディ・メリオライトは有名な3人グループですし、彼女が儀式を受けるのは『鉄の都』ですよ。それに当の本人が俺の顔をじゃがいものようなふくれっ面にした張本人と来れば、俺の方から願い下げです。その点ギルティーネさんは従順で素直だ。隣に置くには丁度いい。ここで彼女の管理権を持っていかれるのは困るのですよ」
「罪人である彼女を横につれる方が余程見栄えが悪いと思うが?」
「俺の帰還先である『朱月の都』に彼女が罪人であることを知る者は殆どいない。だから彼女が罪人でも周囲は気付かない。貴方自身もそう考えていたと記憶していますが?」
「…………………」
教導師の男が黙りこくる。その沈黙は反論の余地を探しているのか、或いは俺の演技を疑っているのか。ここで騙しきれなかったら今度こそ話は終了だ。表情と態度を崩さず、俺は余裕たっぷりに「どうしました?」と声をかけた。実際には余裕など微塵もない。それでも、俺は騙り通した。
やがて黙考した男はゆっくりと顔を上げ、腰に装着していた鍵束を外した。
「予定外の行動は困るのだがな。しかし今回の契約においてどのタイミングで解約が成されるかは明確に決められていない。ならば君が彼女を最後まで利用するためにもう1日彼女を管理することには規則上何の問題もなくなる。………いいだろう、持っていけ」
ひゅっ、と軽い放物線を描いた鍵束が俺の手に収まる。ギルティーネの枷を解錠する重要な代物だ。どうやら彼は俺のことを「利用できるものはとことん利用する存在」として勘違いしてくれたらしい。俺にとっては理由は何でもいい。今回の試験の結末を納得できるものにするためには彼女の存在が必要不可欠だ。
それに、上手くいけば彼女の表での立場を確立させることが出来るかもしれない。仮に罪人であったとしても、正式な教育機関で資格を受け取るのだ。彼女に与えられる資格が本当に用意されているのかは判然としない部分が
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