Side Story
少女怪盗と仮面の神父 35
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被害者を責める権利は無い。
だが、彼女は復讐を嘲笑った。
思い返せば憎悪そのものにしか聞こえない言葉を幾つも放っていた口で、報復の可能性を全否定した。
(解らない……復讐が目的じゃないなら、イオーネは何を見て、何を求めているの?)
ベルヘンス卿の袖を握り締めて反応を待つミートリッテに、けれど、返って来たのは答えではなく。
「ねぇ……バーデルの軍とネアウィック村の自警団が共同で包囲網を敷いていたこの時機に、追われている私達がわざわざ足跡を残してアルフィンを拉致したのは何故だと思う?」
「え?」
「本来は王都に住んでいる殿下が、既にハウィスへと継がせた後のリアメルティ領に現れた理由は? ブルーローズを含めて七十……いえ、百人くらいかしら。これだけ多くの騎士を一度に動かした理由は? 殿下がハウィスとの賭けを通じてお前を領主の後継者に指名した理由、私が指輪の継承を後押しした理由は何だと思う?」
「は? え!?」
一度に様々な情報を与えられ、咄嗟にエルーラン王子を見上げてしまった。
上半身を捻り、腰に手を当ててイオーネとアーレストを横目に眺める彼は、一音も発すること無く不敵に微笑んでいる。
「あはは! まぁ、お前には答えられないでしょうね。折角殿下が教えてくれてた答えを、全部聴き流していたもの。良いわ。私が教えてあげる。話はとても単純よ」
イオーネの右腕が真っ直ぐに伸び、毒の鏃でミートリッテを指し示す。
「約二十五年前に開かれた大戦で、バーデルとアルスエルナは主要宗教の違いから敵対関係にあった。終戦後は表面上アリア信仰にも門を開いたバーデルだけど、面白く思わない連中は当然、貴族にも民間にも大勢居たわ。その一部が十九年前、アルスエルナとの国境付近で、アリア信仰の有力者と繋がりある女性を集団暴行……死に至らしめた。結果、どうなったと思う? 全世界発信のバーデル総叩きよ。大戦勝者のアリア信仰に唾を吐いた国がどういう扱いを受けるか、敗戦国への丁度良い見せしめになったってワケ。バーデルの上層は、アリア信仰寄りだった各国の激しい怒りを抑える為、自国の安全の為に、暴行犯共を考え付く限りの残酷な拷問付きで処刑させた。けどこれ、元々アリア信仰に好感を持ってない人間には、アリア信仰主導で行われた胸糞悪い私刑にしか見えなかったの。おかげでアルスエルナへの反感は、表に出ずとも今日まで絶えず続いてる」
「…………?」
十九年前の話は初耳だが、アルスエルナとバーデルの不仲は周知の事実だ。
何を今更……
「そんな中、アルスエルナがたった一人の義賊に国土を荒らされている事。義賊対策の中身が自国の兵力向上ではなく、傭兵を雇っている事。現リアメルティ領主が元怪盗集団の構成員で、彼女の正式な後ろ楯がアルスエルナの第二王子である事。更に、次
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