Side Story
少女怪盗と仮面の神父 35
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れた山猫を捉えてぱちぱちと数回瞬く。
そして
「……くっ! あっははは! 復讐……? 復讐ですって!? どうしようもないわね、頭にお花畑を乗せてる温室育ちの莫迦猫は! 私がそんな下らない動機でアルスエルナに来たと、本気で思ったの!?」
楽しくて仕方ないとでも言いたげに、大声で笑った。
「でもっ……だって、あなたは!」
「復讐とやらに何の意味があるの? 仕返し? 気晴らし? 八つ当たり? あはっ、実に莫迦莫迦しい。得られるモノが一つも無い行為に執着しても時間の無駄。無意味だわ。……私はねぇ、シャムロック。この世界に存在する何よりも誰よりも、ブルーローズにこそ感謝しているのよ?」
「「「!!?」」」
くつくつ喉を鳴らすイオーネに、驚きと戸惑いが混じった軍属騎士達の視線が集中する。背後からも息を呑む音が二つ、聞こえた。
「十三年前……ブルーローズに親の形見を奪われて激昂した子爵は、当日の邸宅に居た使用人全員を激しく責め立てた。中でも、容姿の珍しさと職務に対する勤勉さで群を抜いて目立っていたウェミアへの殴る蹴るを加えた叱責は、子爵との睦まやかな仲に定評があった婚約者でさえ怯えて逃げ出すほど、凄まじいものだったわ。ウェミアを庇った私は、彼女を見逃す代わりに一人で形見を取り戻して来いと命じられてね。調査と追跡の末に漸く辿り着いたバーデルの街で、形見の新しい所有者となっていた貴族をうっかり殺してしまったのよ。初めは、人を刺したナイフの感触が恐ろしいと思った。次に、アルスエルナへの帰路が断たれてしまうと焦った。権力者を害した罪人ですもの。渡国制限を科されるのは当然よね。けど……目の前に横たわる体が色を失っていくのを見届けると、恐怖も焦りも後悔も、全部消え去った。理解したの。欲しい物は根こそぎ奪い取れば良いのだと。『奪われた者が二度と関われないように、欠片も残さず総てを奪え』。これは、お前達義賊の行為が教えてくれた素晴らしい教訓。だから私は、気付かせてくれたブルーローズに深く感謝しているし、欲しい物を手に入れる為に神父とお前を利用する。それだけの話よ」
握り締めている毒矢を自らの顔に引き寄せ、愛しささえ感じさせる仕草で口付けるイオーネ。
鏃が離れた今、本気を出せば逃げられる筈なのに、アーレストは微動だにしない。
この男……やっぱり、わざと捕まってる。
「……欲しい物って、何? 私を痛め付けてハウィス達を苦しめて、あなたは何を得られるの?」
彼女自身が義賊の被害者であり、アルフィンの生母・ウェミアの関係者だった……というのは、本人の言葉で確認できた。
狂気染みている言動の数々は、「復讐が目的ならば」、寧ろ正気だ。
アルフィンを傷付け、ベルヘンス卿とマーシャルを殺しかけ、多くの商人を殺した事は絶対に赦せないが……加害者に
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