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フロンティアを駆け抜けて
歪んだ慕情
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ジェムが目を覚ますと、ベッドに横たえられていた。もう日は登り切ったのか、日差しが部屋を照らしている。

(あれ、私……?)

 散歩に出たつもりだったけど、寝てしまったのだろうか。記憶をたどり、思い出す。そうだ、自分は確かに部屋を出た。そして自分のファンだと名乗る少女に出会い……

(あの子は、どこに?)

 そもそもいったいここはどこなのか、自分にあのお茶を飲ませた彼女は今何をしているのか。『眠り粉』と『痺れ粉』の効果は大分薄れたのか、少し頭に寝起き特有の痺れはあるものの、体を動かすには問題はない。

「あら、お目覚めですか」

 それと同時に、ジェムのファンを名乗った少女――アルカが話しかけてきた。体を起こしたジェムの真正面、椅子に。背後には、マスキッパとウツボットがアルカを守るように立っている。

「……ここはどこ?あなたたちは、私をどうするつもりなの?」

 自分の意識が落ちる直前、彼女は自分をアマノの関係者だと言った。故にジェムは、あなたたちと呼ぶ。それを聞いて、アルカはため息をついた。

「無粋ですねえ、今のあなたにはもっと気にすることがあると思うのですよ」

 アルカはジェムの体を穴のあくほど凝視する。そして頬に手を当て、顔を赤らめた。恍惚としているといってもいいだろう。

「ああ……やっぱりかわいいのですよ。昨日徹夜して見繕った甲斐がありました」
「……?」

 ジェムは自分の体を見る。それはいつものパーカーではなく、人形が着ているような綺麗なゴシックロリータの服だった。サイズもぴったり合わせられている。こんな事態でなければ鏡の前でゆっくり眺めて、着せてくれたことにお礼も言うかもしれないが、生憎そういう状況ではない。むしろ不気味さしか感じない。

「これ、あなたが着せたの……?」
「はい。ついでにすべすべお肌も堪能させていただいたのです」

 アルカはジェムと同じ女性である。だがアルカの邪な視線にジェムは身震いした。思わず自分の肩を抱く。

「あら、ドン引きされてしまったのです。……まあそれはそれとして、あなたはどうしたいですか?」
「……このまま何もせず返してくれたら、嬉しいけど」
「お断りするのです」

わざわざ拉致した以上、当然の返答だろう。ジェムは腰につけているモンスターボールに手をかけようとして……自分がボールを一個しか持っていないことに気付いた。

「あなた、私のポケモン達は!?」
「それならここですよ」

 アルカは背後に控えるウツボットの頭の葉を見せる。そこには5つのモンスターボールが乗せられていた。ジェムの眉根が釣り上がる。あれは間違いなく自分のものだ。

「……返して」
「返しますよ?あなた
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